5/23 ヒアリング&打ち合わせ

TA赤垣です。
5月23日、smtにて清水さん、北野さんとヒアリングや実測調査の打ち合わせを行いました。(学生は佐藤、平井、青島)
また、設備関係のお話を橋本様に伺う事ができました。お忙しい中本当にありがとうございました。

松原のコメントを赤で書いていくので、ご参照ください。無事はじまったようでなによりです。


この上の写真に映っているのは1:50の大きな平面図だと思います。内装だし、これくらい大きいスケールがいいですね。

■リサーチ班について
 時間班|施設の利用状況について調査する。
 …3名
 空間班|施設の建築、設備的特徴や被害状況について調査する。
 …4名
 もの班|床、壁、天井や家具等の素材、寸法などについて調査する。
 …3名
※現在各班単位で調査を進めており、インタビュー等もこの班毎に行わせて頂きたい。

■調査項目
 □ヒアリング
  時間班
  ・2F、7Fで開館当時からの大幅なプログラム変更について
   ー変更内容(配置換え、機能の変更)
   ー作業環境への影響
  ・2F、7Fの部屋の利用状況について
   ー控え室、託児所の年間利用日数
   ー利用者の年齢層の1日の変化
  ・事務機能について
   ー各担当者の人数
   ー座席数と位置
   ーPC台数
   ー震災後の作業環境についての感想
  空間班
  ・チューブの名称変更について
   ーなぜ当初の名称から変更になったのか
  ・空調や照明の利用方法について
   ー時間による切り替え、季節による切り替えなど
  もの班
  ・床、壁、天井の素材や家具について
   ー現状の素材や家具が選ばれたときの候補と選定理由
    →絞って質問します。
  ・家具や素材について利用者、職員の要望
   ーこの家具は使いやすい、使いにくいなど
   ー寒い、あついなどの苦情など
 □見学、実測
  ・各階の被害状況の実測
   ー7Fについては1時間程度、その他の階については10〜30分程度見学させて頂きたい。
   ー空間班4名が実測
  ・家具の実測
   ー2F、7Fの家具についてそれぞれ30分程度
   ーもの班3名が実測

サインについてもよく観察してください。松田行正さんのデザインですが、2,7階にみなさんが今回新しいサインを上書きするのもありだと思います。サインは、照明や家具と並んで視覚的に大きな要素だし、内装変更のときには大きな力を持ちます。

■資料について
 ・各階の平面図、断面図、天伏図の.aiデータ
 ・1日の来場の推移と人の分布
 ー特に2F、7Fでどこが人気があったのか。
 ・被害状況をまとめたものや写真等

被害前の内観写真を集めておくと、みなさんの改装案を、設計段階でビフォアアフター的にプレゼンできると思います。建築の使われかたのリサーチとあわせてぜひ積極的に、空間をよく示している震災前の画像を集めてください。いわゆるネットサイトに投稿されているようなものも含めて集めるといいと思います。ああいうところでアップされている画像には、つまり施設利用者が無意識に考える絵になるポイントが記録されているわけですし、みなさんの設計の参考になるはずです。

詳細なヒアリングは25日に行います。
smtについては、出版されている本である程度の知識を共有し、質問内容に失礼が無いようにすることを心がけましょう。また、smtの方から情報を提供してもらうだけでなく、自発的に行動し、新たな着眼点を探すことも大切だと清水さんよりご指摘を頂きました。
以上、頑張りましょう。

2011自己紹介

本年度の履修者は11名です。





Name:遠藤貴弘 Takahiro Endo
Lab:ITコミュニケーションデザイン (本江研)
Hometown:宮城
Hobby:食べる事
Graduate university:宮城大学
Graduation project:REDESIGN OF TSUKUBA UNIVERSITY
 
 
 
 


名前:新藤大介
研究室:ITコミュニケーションデザイン (本江研)
出身:群馬県前橋市
趣味:バンド活動
出身大学:東北大学
卒業設計:人波、ハコへ、ドコへ (商店街のはずれに建つ映画館とライブハウスの複合文化施設の提案)
 
 
 
 


――――――――――――――――
Name:Xu Geng
Lab:Urban and Architectural Theory
Hometown:Wuhan,Hubei Province
Hobby:TV GAME/Music/Sleeping
Graduate university:Wuhan University of Technology
Graduation project:Complex of business and office
――――――――――――――――
 
 
 
 

 





名前 山田哲也
研究室 ITコミュニケーションデザイン学分野 本江研
出身 京都
最近はアルゴリズミックデザインに興味あります。







名前:佐藤知
研究室:建築空間学研究室(小野田研究室)
出身:山形県酒田市
趣味:ランニング
出身大学:東北大学
卒業設計:ひだ状の壁、床、天井の表裏によって樹形システムと
ネットワークシステムを同時に存在させた都市的なものを設計。






Name-平野晴香
Lab-都市・建築理論 五十嵐太郎研究室
Hometown-静岡県富士宮市
Hobby-Cycling,Wine
Graduate university-芝浦工業大学・堀越英嗣研究室
Graduation project-残柱のアリア・東京都平和島の流通センター倉庫跡地にて、
消費社会の象徴としての虚構の塊を再構成する




Name:中村龍太郎 Ryutaro Nakamura
Lab:建築空間学(小野田研)
Hometown:宇都宮
Hobby:映画
Graduate university:東北大学
Graduation project:コウサテント(複合商業施設)






名前:平井百香
研究室:建築空間学(小野田研)
出身:栃木県宇都宮市
趣味:ルームシェアと本とアイス
出身大学:東北大学
卒業設計:都市における世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
(小説の虚構の空間を都市にばらまいて現実と虚構と自分を対比させる)









名前    山崎 健悟
研究室  建築空間学 小野田研究室
出身    酒田市
趣味    自炊、読書、映画、写真
出身大学 芝浦工業大学
卒業設計 film×city
      (地方都市の映画ロケとそれによる観光産業を結ぶ新しいシネコンの提案)





名前 青島昂大(アオシマタカヒロ
研究室 ITコミュケーションデザイン(本江研)
出身 東京都
趣味 音楽
卒業設計 共用部でつながる300世帯集合住宅

2011年せんだいスタジオキックオフ!

■2011年せんだいスタジオキックオフ!
2011年度 東北大学大学院1年前期設計課題が始まりました。
この前期設計課題は中国で活躍する建築家・松原弘典氏(慶応義塾大学総合政策学部 准教授)を
講師に向かえ2006年から始まったスタジオで今年で6年目を迎えます。
06年から09年は中国を舞台に、北京の四合院建替え計画(06年)/
北京郊外の若者向け集合住宅計画(07年)/洛陽の遺跡保存計画(08年)/
唐山市の陶器工場地区再生計画(09年)
トルコブルサ市の農業生産施設を核とした村の再生計画(10年)
本年度の課題は、「せんだいメディアテークの改修を通して「その場にふさわしい」空間を考える」です。
天井が壊れてしまったメディアテークの7階と、2010年の開館10周年のときに配置換えを行った2階のプログラムの組み直しと再設計を行うというものです。今年は3月11日の東北地方太平洋沖地震の影響もあり、例年のように海外でのワークショップを行うことはできませんが、今仙台にいる私たちにとって、必ず身になる課題であると思います。

5月15日に松原先生をお迎えして、課題説明とメディアテークの見学を行いました。

この日は開館当初からいらっしゃる学芸員の清水有さんに館内をご案内していただきました。
また、今後ヒアリングなどで御協力のお約束をいただきました。
さらに私たちのOBである学芸員の北野さんには「3がつ11にちをわすれないためにセンター」で
本スタジオを記録していただき、一般に公開されることとなりました。
http://www.smt.city.sendai.jp/wasuren/wasuren.pdf

スタジオの第一歩としてリサーチ項目を学生同士でディスカッションして決定し、グループ分けを行いました。


清水様、北野様、お忙しい中本当にありがとうございました。
履修者の皆様、頑張りましょう!松原先生、今年もどうぞよろしくお願い致します。
TA赤垣

その場にふさわしい空間を考える

TA赤垣です。松原先生による課題概要をup致します。


せんだいメディアテークの改修を通して「その場にふさわしい」空間を考える


●スタジオの目標:
みなさんに今回考えてもらいたいのは「その場にふさわしい」建築のあり方です。せんだいメディアテークの2階と7階の再設計を通して、このテーマについて考えてもらいたいと思っています。あなたにとって、どういう建築が、「その場にふさわしい」と見えているでしょうか?設計者である我々はそうした建築とどうつきあえばいいでしょうか。もちろんそういう建築を目標にしない、という態度も、つきあい方の1つです。そうした態度も含めて、「その場にふさわしい」建築のあり方はどういうものか、この課題を通じて表明してほしい。
 建築をつくることは、モノを通して自分の考えを提示することです。建築をつくることが、設計という行為を通す以上、そこには計画とその実現があり、そこに何らかの意思がこめられることは不可避です。意思をこめないふりをする設計者もいますし、エゴ丸出しの意思を建築に付帯させる設計者もいます。その善し悪しはここでは言わない。少なくとも言えるのは、建築とは設計者の意思が抜きがたく付帯しているものだということです。みなさんに考えてもらいたいのはこの意思との付き合い方でもあります。こうした建築に必ずついてくる設計者の意思と「その場にふさわしい」という文脈主義はどうおりあいをつけるべきか。
「その場にふさわしい」というのは「美しい」とか「使いやすい」とかいう評価とは違います。結果的に美しかったり使いやすければそれはそれでいいと思うんだけど、ここでみなさんにもっとも優先して考えてほしいのは「その場所にふさわしい」建築のあり方についてです。それはより文脈的であり、周辺に依存しており、関係の中でできあがっているはずのものです。みなさんに、今そこにある関係に敏感になってもらい、そこになにか新しいものを加えてほしいと思います。そうしたふるまいにおいて、各履修者がお互い切磋琢磨する。そういうスタジオにしたいと思います。
このスタジオは地震と関係しています。毎年海外でやっているスタジオが今年は仙台でやりますし、今まであった他校との交流も今年のこのスタジオではないです。メディアテークの2,7階だけですから内装設計です。中国で考えていた大きい計画とは違いますね。これは地震の負の影響と言わざるを得ない。
しかし同時に、私たちがこの地震でまわりのコンテクストをもう一度深く考えさせられる状況に置かれていることを、私はここでみなさんといっしょに受け止めたいと思っています。これは負の影響ではない。前向きに地震を利用したいと思っています。これは我々にできる、地震に負けない、という態度の表明の一種でもあると思っています。それから私はここで壊れたものを直すとか、新しい都市を作るチャンスだとか、そういうことを言っているのではありません。それは他の人にやってもらえばいいです。私たちがここで、大学院のスタジオとして集中すべきなのは、失われる前の状態に敏感になり、それをよく思い出し、なにかそこに新しいものをつけたすこと、です。私たちの前でたくさんのものが失われてしまいました。それは比喩的な意味でなく現実的にです。その現実を前に、みなさんとどこまで知的に強いものを構想できるか、がこのスタジオの目標です。



●具体的な課題設定:
天井が壊れてしまったメディアテークの7階と、2010年の開館10周年のときに配置換えを行った2階のプログラムの組み直しと再設計
・プログラム上の条件としては以下
→2,7階の現行のプログラムはそのままとするが2つのフロアでのシャッフルはありうる
→新築時、10周年記念のときのプログラム組みかえの経緯をグループワークでよく調べてありうべき組み換えを検討する
→2フロアともトイレは動かせない。7階シアターも位置は不動(床が上がっているので位置は変えられないが壁の仕様を変えるのは可能)。あとの緒室は自由に動かせる。
→2階の子ども図書館はいささか扱いが違うので注意。リサーチの上でどうすべきか判断してルール決める。
・大学院生のスタジオとしてコンテクストに敏感になるための手掛かりとして、材料について特化した設計案を作ってほしい。「その場にふさわしい」ものの手掛かりになると思われる。
→今までのメディアテークで使われている材料に着目し、それを使った「韻を踏んだ設計」の手掛かりにする(亜鉛鉄板のパンチング、押出中空セメント板、プロフィリットガラス、フロストミラー、ファインデッキなど)
今回の課題は新築じゃないし、建築じゃなくて内装ですが、既存のコンテクストに敏感になった、細かい設計をすることが求められています。



●おおまかなスケジュール:
・5月から6月上旬→3週間程度のリサーチ
初回にグループ分けし、リサーチ結果を共有するようにする。リサーチの結果に従って、そのあとの改装再生デザインのルールを明確化する。smtの内部要求や過去の改築の経緯、使用されている材料とメーカの調査、建設時の設計の意図、などを班にわかれて作業。
(9日に分かれて作業を始めるか、15日にグループに分けるかは小野田先生に決めていただく)
・6月中旬から7月前半→詳細図を含めた具体的な設計
2階と7階の改装再生デザイン。リサーチの結果でルールを明確化してスタートラインをそろえて始める。やはりチームでやるとよいと思う。リサーチとは別にうまく混ざり合わせた設計チームを再編成して作業。各班とも2階と7階の2つのフロアの関係をうまくからませるのがポイント。
・7月のプレゼンテーション
「その場所にふさわしい」メディアテークの2,7階の改装再生提案の発表
断面詳細図と天伏図も描くことにしたい。細かい図面をびっちり描くのと同時に、案としてのイマジナリ―な部分も出してほしいし、材料についての提案、失われたものへの態度を示してほしい。



●参考資料:
非線形の出来事(これは1人1冊ほしい、設計の経緯がよくわかる)
・GAの大型図面集(これがあると詳細図描けます)
メディアテークコンセプトブック(NTT出版、プログラム再考の上でいいか)

松原最終講評

みなさんこんにちは、松原弘典です。


今年は「チャイナスタジオ」の看板をかけかえて、急遽「アジアスタジオ」となったのですが、とっても楽しめたんじゃないでしょうか。トルコはよかったですね。国際会議の便乗企画として生まれたこの企画ですが、さまざまな方のご厚意でここまで楽しくやれて、本当によかったと思います。ビジネスではなかなかこうはうまくいかないんだけれど、教育というのはやはり多くの善意が入ってきやすいプラットフォームなわけです。みなさんの学びは、周りの方の善意に支えられていますが、同時に周りにも多くのいい効果を残したと思います。これを糧に前進してください。


毎年このスタジオでみなさんに何を学んでいただくべきかよく考えます。しかも今年は私も初めてのトルコで、言ってみれば出題者である私にとっても計画対象地は全く知らないところでした。そんな事情もあって、ある意味では皆さんと同じ目線から問題をとらえることができたと思っています。そこでこの問題、すなわち「外国まで行って設計スタジオをすることに意味とは何か」ということを改めてよく考えました。おそらくこの点こそが、小野田先生もこのスタジオを運営している時の核心となる問題でょうし、このことについてやはり教員も学生もより意識的になる必要があります。
 この問題について、今の私も明確な回答がさっと差し出せるわけではないんだけれど、現段階でぼんやりと考えているのは、「自分の考えをいかに圧縮できるか」ということなのではないかということです。「わかりやすい図面を描く」とか「英語をうまくしゃべる」とかいうこと以前にこういうことが必要だということをみながもっと共有しておく必要がある。海外に出て建築設計をするということは、日本人どうしならなんとなく共有している事象(それを人は「甘え」と呼びます)に頼ることはできません。わかりあっていないという前提の中でモノを作りはじめなくてはいけないし、異なる背景や考えを持つ人の間でうまく落下点を見つけて、実際のモノにするのが我々の仕事なわけです。そのとき最低限必要なのが「自分の考えを圧縮する」ことだと思います。それなりに作業をしてくればたくさんの考えや成果が付随してくるわけだけど、大事なところをすくいとって(圧縮して)まずそこだけをきちんと伝える。その圧縮内容は伝える相手によって少しずつ違ってくるでしょうし、圧縮する程度も発表のときの形式によって調整が必要になってくるはずです。それをみなさんどれくらいできたかな、というのを最終講評では見ておりました。


東北大学で建築を学ぶ学生は地力があってレベルが高い、というのが私の一般的な理解で、それは最終講評の終わった今も変わっていませんが、今回の皆さんを見ていてワークショップのときはやや不満がありました。自分たちだけで固まる、最初だけ話して作業を分けたらあとは自分の作業領域にこもる、発表もマイクを中国人に渡すことが多い。これではだめです。各人のスキルも重要ですが、こういう共同作業のときに、もっとリーダーシップを発揮できないとまずいと思います。リーダーはだれかにやってもらって自分は与えられた領域だけこなす、という態度では、自分に降ってくる領域はたかがしれたものになってしまいます。模型のうまい日本人は模型担当、なんてことになりがち。ああいうところではもっと主体的にコミュニケーションを発揮し、仕事のペースを自分が作り出し、いちばんおもしろいところを自分がとって作業する、くらいのつもりでやるべきです。それは英語が達者であるなしに関係ありません。スケッチや写真を多用し、周りが何をやっているのか把握すれば、おのずとできるはずです。問題点や目標を見出し、それを簡単なキーワードにしてピンナップなどでみなに伝えるようにする。そうすればほかの人の器用なだけで内容の圧縮されていない話より、あなたの下手だが圧縮された英語にみなが耳を貸すようになります。
 最終講評は取り返すものがありました。みなさんがんばったと思います。グループごとに出来不出来はあったけれど、中国側を圧倒していたと思います。圧縮の度合いにも上手下手はありましたが、それぞれが圧縮された内容をコンパクトに話そうとしていた努力はよくわかりました。以下に各グループへのコメントを書きます。


●team ARC
マスタープランの整理がもう少しあってよかった。各人の作業に入る前の広場の計画がまだ練られていなかったために、各建築設計の魅力が発揮しきれなかった。
 マスタープランはどうやら歩車分離をした環状動線を思いついたところで終ってしまった印象がある。もう少し建築をうまく使った囲い込みをしたり、広場形状を工夫したり、川べりの整備をもっと積極的に計画すればずっとよくなったと思う。ドミトリーやバザールに部分的な面白いアイデアがみられたし、あのへんがほかにももっと波及していればよくなっていたと思われるだけにあと一歩の感が強かった。

●happy!
これはやはりもう少し建築的な勉強が必要だと思う。図面にしても設計内容にしても。渡航前のプログラム提案などはとても面白く、どういうふうに渡航後に発展するか期待していたんだけど、あまりプログラム上の面白さを物理的な建築空間に置き換えることができていなかった。カーテンというのも真面目に考えるときっと可能性のある装置のはずなんだけど、アイデアのレベルで終ってしまっていたのではないでしょうか。たとえばあのカーテンがどういう素材でできていて、どういうふうに設置され…と考え出すと、それが空間を具体化するし、プログラムのほうにも影響が出てくると思う。そのへんの建築とプログラムの間の往来ができていなくて、プログラムをそのままシングルラインの図面と模型にしているだけの印象が強い。配置にも可能性もあっただけに、詰めがもう少しほしい印象が残った。

●BOS
問題設定の可能性はある案だったと思う。パブリックとプライバシーの錯綜する難しいテーマ設定だったとも思うが、うまくやればとってもおもしろい水準に到達できたはずだった。しかし実際の設計された内容はやや粗雑で、問題の難しさ自体を設計者が意識していない印象を与えるものだった。土地の所有ラインや共有の歩道のラインを図面に書いていないあたりがそのへんを物語っている。難しい問題をすっとばしてすぐ形態の話しに行った、ということなのかもしれないが、その割には形態もとんがっていなかったのがますます物足りない部分でもあった。もっとずるくなって、問題の難しさを十分把握した図面を用意し、それをすっ飛ばしてうまいこと着地点を見つけたような案にでもしてもらえればすごかったんですが。

AIR
各建築とマスタープランがあまり関係なく存在しているように見えた案。最初のテーマ設定はそろえたのになぜばらばらなんだろう。百歩譲って各建築の意匠はばらばらでもいいとしても、なにかその底をつなぐ視点なりアイデアがないと共同作業している意味がなくなる。各建築ももっとこうすればよかったのにという部分がいささか目立った。
 ある意味これはトルコの民家建築に没入してとんがった改築案などしてもらうことのできた案なのだが、既存民家に対する理解も紋切り型で物足りなかった。対象をよく理解すればおのずとそのどこに力点を置いて改修すべきかも見えてくるはずなんだけど、そもそもの現状トルコ民家の把握が甘く、作りたい最終形だけが先に決まってしまっていた感がある。そうすると提案はなかなかリアルには見えてこないですよね。

●MEGA VILLAGE
渡航前のリサーチでは大きな話だったので、帰ってきてどうなるかと思ったが、その大きい話をひきついで大きい建築を作って、しかもそれが環境になじむ形で設計できていたという点で評価できる。村での最終発表会のときの村民たちの行政官へのあの態度を思い出した。Misi村の人たちだって変わりたいと思っているはずだ。それをどう形にしていくかということを真剣に考えると、このチームのテーマ設定はリアルなものだと思うし、建築的にも(稚拙な部分は多々あるにせよ)面白いものを追求できていたと思う。


というわけで、5組とも、凹凸はありますががんばっていたと思います。もちろんグループワークですから、自分がうまくいかなかったことに対して不本意だと思う人もいるでしょう。しかしグループが低調ならその調子を上げなくてはいけないのもあなたなのです。それができなければあなたはできなかったと評価されてしまう。社会に出るとこの集団性からはほとんどの場合逃げられません。自分の評価を上げるには自分の周りをよくするしかない。きついことですが。
 みなさんは自分の考えを圧縮できていたでしょうか。圧縮したうえで、相手を見ながらその度合いを調整しつつ、対話を試みていましたか?英語があれだけ下手な最後の組の発表者(名前を失念してしまいましたがみなわかるでしょう)が、あれだけ皆の注目を受けていたことを思い出してください。あれは彼の言葉が、オーディエンスに向けたもので、かつ適度に(中学生英語程度に)圧縮されていたからこそ、みなをあれだけ引き寄せていたわけです。人に話を聞いてもらうのにはどうすればいいか?それは記憶している英単語の数に比例しません、どれだけ相手のほうを向いて、相手に合わせて自分の考えを圧縮しているかにかかってきます。そういうことを、今回の設計課題ですこしでも気づいてもらえれば、今回のアジアスタジオはみなさんそれぞれにとって成功だったと言えるでしょう。


スキマティックとリアリスティックの話は、龍神さんがまとめてくれていますが、つまりスキマティックであること(圧縮すること)は重要だが、本当の建築設計の面白さはそこからこぼれ出るところにあるからそれに早く気付いてそのレベルまで到達してほしい(今回はそこまでの案はなかったがいくつか萌芽がみられた)というのと、リアリスティックに考えること(なにを圧縮するかがその対象が適切であること)は重要であり、そのへんは日本チームは中国チームよりよくできていたと思う、というのが私の言いたかったことです。


TAの龍神さんもお疲れさまでした。途中のエスキスログが1回スキップがありましたが、とてもいいフォローをしてもらいました。毎年東北大のTAのレベルの高さには感心させられております。


以上です、みなさんこれをバネに精進してください。応援しています。


松原弘典/北京

ASB2010 仙台での最終講評会の模様をリポート

7月15日に東北大学のギャラリートンチクにてAsia Studio in Bursa 2010の合同最終講評会が行われ、東北大学から5チーム、中国の清華大学から2チームの作品が出展された。


今回の最終講評会には、スタジオマスターの松原弘典先生・小野田泰明教授以外にも、清華大学からXu Maoyan教授、Luo Deyin准教授、トルコ・Uludag大学からNeslihan Dostoglu教授をお招きし、多国籍な講評会となった。


今回はその模様を写真とともに振り返ってみよう。


まず、今回の課題を提示して頂いたUludag大学のネスリハン先生からの課題説明で講評スタート。

課題はトルコのブルサ市近郊にあるMisi村の再生計画である。
Misi村はブルサ市近郊にある人口1,400人程度の小さな村。この村やその周辺地域では耕作放棄地が増え、この村も都市化の波に飲み込まれていくことが予測される。しかし、この村には遺産級の歴史的建築物や街並、農地など都市部にはない豊かさが残っており、これらの資産をどう活用して、農業が衰退した村を再生していくかという課題である。


小野田先生から日本語で会場のみなさんに今回の課題説明やスタジオの進め方についてのイントロダクション中。

会場の雰囲気はこのような感じで、オーディエンスもたくさん集まってくださった。


ここから各チームのプレゼンテーションへ。
1番手は東北大学のチーム「ARC」

team ARC : Architecture×River×Children

 彼らの提案は日本の「少年自然の家」のような体験施設群を村の東側の未開発エリアを中心に建設するというもの。ブルサ市中心部の学校には満足な校庭もないことから、Misi村を彼らの課外活動の場として位置づけ、農業体験や自然とのふれあいを提供する場として再整備する計画である。

3人がそれぞれ中心にプラザを取り囲むようにドミトリー、バザール、学校、図書館をリノベーション手法を基に設計している。


 講評では、全体計画が有機的な配置を用いているのにPlazaが無機的な形状をしている矛盾を指摘され、Plazaの形状の違う提示方法があったのではないだろうか。
また、模型ではグラデーション的にエリア変化しているように見えるのに対して、マスタープランの図面は、ヒエラルキーが感じられる図となっていて乖離した印象がある。


2番手、東北大学のチーム「happy!」
team happy! : Stock Celebration!!

 彼らの提案はこのMisi村がブルサ市の広域都市圏の中で「祝い」というセグメントを担う場として位置づけるというユニークな案である。
 Misi村には都市化によって失われる土地の祝祭性のような雰囲気が残っている点に着目し、豊かな自然や景観を生かして「祝いの場」をつくることを目指していた。
具体的には、村の南西から北東に伸びる村のメインストリートを未開発の東側のエリアにまで延長し、そのストリート沿いに花畑やレストラン、ワインヤード、結婚式場などを計画している。

 今回2人は主に、北東エリアにあるセレモニーホールやワインヤードなどの新築設計を行い、既存の街並の祝祭性を生かしてMisiを祝祭産業によって再活性化しようとした。


 講評では、ネスリハン先生からミシの歴史的な街並と今回設計された白を基調とした建築がどのように調和するのか。どうして白なのか?という指摘があった。また、松原先生からは「ミシのように強いコンテクストのある土地で設計を行う時は、そのコンテクストに沿って設計をするか、または、全く別のコンテクストを用いて設計するかのどちらかであるべきだ。」という指摘に対する解答が弱かった。
本江先生からは、日本では白はニュートラルな印象があるが、トルコではまた異なった感じを与えるのではないか。五十嵐先生からは、白いカーテンがもつ意味は国によって人に与える印象は違うのではないか、など祝祭性の表現として「白」を安易にメタファーとして用いた所への指摘が多かった。祝祭空間の色彩やマテリアルにまでこだわりをみせてくれるとさらに良い提案となるだろう。



Lunch time♪

昨年の中国スタジオ経験者同士(東北大学清華大学)の1年ぶりの再会!!


ランチを挟んで3, 4番手は清華大学の発表。
日本チームと違い、大きな模型はないが、プレゼンテーションのつかみやボードのまとめ方など日本側も見習うところが多かったと思う。

team RED RIBBON from Tshinghua University


 team REDRIBBONは東側エリア周辺の様々な景観点を抽出し、各々の点に小さな建築的仕掛けを施し、それらをリボンのように繋ぐことで人の流れを誘導する建築群の提案している。昨年のチームのようなメガストラクチャーな印象もなく、スケール感もフィットしている印象を受けた。


4番手、team TRANS- from Tshinghua University



5番手、東北大学のチーム「BOS」
atelier BOS : Colony Garden

彼らは街に歴史的な古い空き家が多数存在することに着目し、その空き家と耕作放棄地をセットにしてブルサ都心部の住人に週末住宅のように貸し出すという提案である。
村の西側の旧市街に残る空き家の構造や形式を詳細にリサーチし、空き家のリノベーションと耕作用の農地の貸し出しによる新しい都市近郊滞在型農業ビジネスによりMisiを再活性化する計画。
彼らの設計ではその西側の一部をケーススタディとして、現在有効されていない裏庭スペースを耕作地として貸し出し、裏庭への入り口となる空き家を滞在施設兼ビジターセンターとして設計している。また、裏庭には様々な農業小施設が点在して配置されている。


講評では、分散配置された小屋配置のルールが曖昧な点、ネスリハン先生からは広場部分にも道を引いて、どのように小屋へアクセスするのか明確にした方がわかりやすくて良いという指摘があった。Luo先生からは様々なアイデアを案に詰め込もうとして最もやりたい部分が分かりにくくなっていると指摘があった。彼らの提案は主題が散文的になったところが周囲を戸惑わせたようだ。空き家の改修方法についてもう少し丁寧な解答が見たかった。
また、松原先生は既存の古い住宅と新築物とのコントラストを明確にすべきという指摘があり、このような歴史性の強い場所に作る新築の役割をもっと表現できればよかったのではないだろうか。




6番手、東北大学のチーム「AIR
team AIR : Art In Residence

彼らの提案は村の構造的特徴の考察から構築されていた。
ストーリーの骨子は、空き家が効果的に利用されていないという現状から、それらのリノベーションによってアーティスト・イン・レジデンスへと産業化しようという提案である。
また、一方で設計対象物は、それらリノベーション・レジデンスの配置と、村の地形的な特徴やピクチャレスクな特長を持つ地点の考察を通じて、アーティストたちが作品を発表するギャラリーやスタジオ、ワークショップ・スペース、インフォメーションセンターなどアーティストの活動をサポートし、村の住民との接点となる場を設計している。
リノベーションによるアーティスト・イン・レジデンスというストーリーの枠組みのなかで、それらを表現し、住民に還元する場を設計したと言える。


講評では、マスタープランとそれぞれの建物のデザインとの関係性が薄いように見受けられる点を指摘されていた。個人の設計に関しては全体的に構造についての考察と配慮が足りない印象を受けた。空き家のリノベーションはもちろん新築の建物についてもミシの伝統的な住居の構造などを取り込んで設計すれば設計の中身自体も少し変わってくるはずだ。また4つの建築がバラバラにデザインされているように見える。
それぞれ各場所性を読み込んだ設計を行っていたが、各拠点同士のデザインにも統一感を欠いた面がある。確かにそれぞれ個性の異なる場所性を持つポイントを選出してはいたが、ミシの伝統住居の構造に対する考察や配慮を行っていれば、構造に対する姿勢などから統一感も生まれてきたのではないだろうか。




大トリ、東北大学のチーム「MEGA VILLAGE」
team MEGA VILLAGE : MEGA VILLAGE

彼らの提案は、Misi村だけでなく、その背後にあるさらに小規模な3つの村と恊働によるメガな農業生産体系を構築するというもの。Misi村はその加工・物流拠点として位置づけ、村の東側エリアを新規開発している。
村を単体で見るのではなく、広域的な物流計画の視点からMisiの強みを挙げ、農業生産高と都市への物流能力の向上を掲げている。さらに、農地と人材の有効活用のため、各集落の人材を季節ごとに移動させ、拠点のMisiに人を集めることも計画している。
具体的な設計物は、収穫物の加工工場と体験施設の複合建築、また他の集落からの労働者や滞在者のためのゲストハウス、さらに農業学校であり、それらがメガプラザを取り囲む構成。


講評では、ネスリハン先生から農業学校と民宿の配置を逆にした方が民宿から川を見渡せるためより良い案になるなどの指摘もあった。また、彼らの案は広域の視点が肝であるがゆえに、Misi村という視点で見ると東側で計画したことが西側にどう広がっていくかという点にも注意を払った説明が必要だと感じた。一方で、松原先生からは、「こういう小さな村の再生計画ではどうしても小さな建築を装置として設定しがちであるのに対して、彼らのように大きな建築を作ってもリアリティのある提案も出来るという方向性を示した案だ」という評価も受けた。


巨大な模型

手伝いに参加して頂いた先輩・同級生・下級生諸君に心から感謝!!




総評


清華大学のXu先生(左)とLuo先生(右)

Xu先生は、グループによってはマスタープランと建築空間の間に乖離が見られたのが少し残念だったと評され、ローカルな地元の住民への配慮やその文化への敬意という繊細な配慮が提案にあまり見られなかった点を指摘した。もう少し地元の社会構造に配慮した提案ができればと感じた。




松原先生の総評:『schematic(図式的)』と『realistic(現実的)』


松原先生の総評では、今回の課題点として、『schematic(図式的)』と『realistic(現実的)』いう課題を挙げられた。


■『スキマティック(図式的)』
松原先生は、「大きな敷地で共同設計ということで、もちろんマスタープランをつくる段階では、みんなで意識共有のために図式的なものが必要だと思うが、個々の建築のデザインになったときにまでその図式(軸線など)に引っ張られる傾向が強かった。マスタープランにおける軸だとかよりも、実際に現地で体験した川縁ように居心地のよい空間が作れていた提案があるかというと今回の提案には少なかった。」と評されていた。
オーディエンスとしても、大きなマスタープランから個々の建築デザインへの接続が、プレゼンテーションの中ですんなり消化できないことが多かった。このようにマスタープランと建築空間に乖離が見られる点は清華大学のXu先生も同様の指摘をされていた。


■『リアリスティック(現実的)』
図式的なマスタープランに引っ張られず、土地のコンテクストや住民の文化・生活、地域の社会構造に則した提案が出来ればさらによい提案が出来ただろう。MEGA VILAGE やstock celebrationは新たなコンテクストの移植によって大きな建築でもありえるという現実性を示した点で意義深かった。








最後に。
今年度の課題は昨年までの中国から舞台を変え、トルコの小さな村の再生計画という課題でした。小さな村と言えど履修学生にとってはハンドリングした経験がない程敷地が広大な上に、ほぼ初めての共同設計、さらに昨年のスタジオと比べてメンバーが1人,2人少ない状況という過酷な課題だったと感じています。今年度の状況をみていると来年度はやはり4人1組が良いかなとも感じています。
しかし、そんな中でも、各チーム様々な視点から切り込んで、違う特長をもったものが提案できたことはすばらしかったと思います。欲を言えばもう少し速い段階でマスタープランを終わらせてほしかったですが。

個人としては共同設計を通じて自分の得手不得手が理解できた課題だったと思います。プレゼンがうまい人、チームのコンサルタントが得意な人、盛り上げ役、設計が速い人、英語ができる人、自分にないものも客観的にみれたのではないでしょうか。また、それによって自分がチームの中でどういう立ち振る舞いをすれば、チームの案がドライブされるか学んだと思います。
今回の経験を活かして後期の国際ワークショップでは海外の学生をリードしてください。



最後の最後ですが、スタジオマスターの松原弘典先生、小野田先生、Neslihan Dostoglu先生、Xu Maoyan先生、Luo Deyin先生ならびに今回の課題・講評会に参加してくださった先生方、トルコでお世話になったホームステイ先の家族の方々、模型を手伝ってくれた先輩方、同級生、下級生、すべての方々にこの場を借りて御礼申し上げます。



smtにて



松原先生には今年度の総評を掲載して頂く予定です。松原弘典先生からのコメントをお待ちしています。

TA

ASB2010 Final Review in Sendai !!

日本語版


7月15日の最終講評会の成果物を日本語版で掲載します。

team ARC : Kazuhito Abe / Koya Utsumi / Haruka Suzuki
Agriculture×River×Children


1. MASTER PLAN
《コンセプト》
 私たちはMisiの東側に小学生向けの農業学校を計画しました。都市部の学校に通っている小学生が、一年に一度農業体験をするためにこの学校へやってきます。

《リサーチ》
 Misiには3つの魅力的な場所があると考えました。
 1つ目はモスク周辺。ここでは週に一度、街から商人がやってきてバザールを開きます。2つ目は村の北側にあるピクニックエリア。ここでは休日になると街から大勢の人がやってきてピクニックやバーベキューなどを行います。3つ目は川岸の空間です。木が生い茂り、心地よい木陰があります。


《設計》
 私たちはMisiには魅力的な場所が既にいくつも存在していると感じました。Misiに必要なことは、その魅力をより多くの人々が共有できるものとして引き出すことだと思います。そこで私たちはこれらの魅力的な場所をお互いに繋ぐ建築を設計しようと考えました。


2.DESIGN AREA

 敷地はMisiの東側のエリアです。設計ではリノベーションの手法を用い、“繋ぐ”ということを意識して、農業学校のためのドミトリー、図書館、バザールセンター、小学校を計画しました。敷地の中央にはPlazaとドミトリーを配置します。川沿いには図書館、バザールセンター、小学校を配置します。この川沿いの建築群をRiverside Architecturesと呼びます。
 ドミトリーに宿泊している子供たちはRiverside Architecturesを通って川岸へアクセスします。また、休日にバザールやピクニックに来た人々はバッファゾーンとしてのRiverside Architecturesを通って中央Plazaへアクセスします。


3.PERCEPECTIVES

プラザからドミトリーを見る



バザールセンターの内観



北側の川岸から図書館をみる

この農業学校とRiverside Architecturesによって、Misiの魅力が引き出され、村全体を活性化させることができると思います。



team happy : Yuri Akagaki / Takaaki Kikuchi
Stock Celebration !!

1.RESEARCH & CONCEPT

 ブルサは広大な農地を持っています。私達は周辺の農地とは異なったミシ独自の農業アイデンティティを形成することで、ミシの農業を再生しようと考えました。
 私達はミシを、隣接する都市ブルサの一部として捉えました。そして、ミシをブルサの中で「祝い」という機能を担う場所として位置づけました。なぜなら、ミシには古い街並が残り、自然が豊かで、ブドウ畑がありワインが生産出来るなど「祝い」の舞台になり得る可能性を持っているのではないかと考えたからです。そこで、「祝い」に特化した農業をミシの農業アイデンティティにしようと考えました。
 さらに、外から入ってきた収入をもとにミシの古い街並を保存再生することで、美しい街並とともに人々の祝いの記憶が蓄積されていくことを目指しました。そうすることで都市での次々と消費される「祝い」とは違った、蓄積される「祝い」を提案出来るのではないかと考えました。



2.MASTER PLAN

 私達は結婚式場やワイナリーと言った祝いに結びつくプログラムを軸にそって配置しました。さらに既存の建築をリノベーションしクラフトセンターやそこで働く人々の住宅を作ることで、新築と既存の建築で1つの軸を形作っていこうとしました。
 私達はミシの歴史建築の多い道とランドスケープと人々の活動を取り入れて軸を考えました。


3.ARRANGEMENT

これは1階部分の平面図です。
 私達の設計した建築は1つの道と、中央広場、花畑、そしてブドウ畑といった三つの広場を作ります。
 それぞれの建築はお互いに関係し合っています。中央広場からはブドウ畑が建物の間を通して見えるようになっています。建築のボリュームをずらしながら配置し、また2つの建築で道の幅を操作し広場と関係させることで変化に富んだシーンが展開することが目指されました。これはトルコのグランバザールをヒントにしたアイデアです。さらに、結婚式場は中央広場側の建築に置きながら、メイクアップルームをブドウ畑側の建築に入れると言ったように、片方の建築で機能をまとめてしまうのではなく、両方の建築が2つで1つの物として使われるように設計しました。



4.PERCEPECTIVE_01

 これは花畑からみた中央ストリートのパースです。
 スロープやブリッジが道の上を交差することで、人々の祝いに関係した活動が重なるようになっています。このスロープではワイナリーの生産工程が上から順に展開されるようになっています。ワインを生産する風景が建築の外までしみ出してきてくることで、物を作る行為が持つ祝祭性が道を通る人にも感じられるような空間を目指しました。


5.PERCEPECTIVE_02

 これはカーテン建築のパースです。
 動くカーテンは人々の活動を祝福しています。

ミシでこのような祝いをテーマとした建築を計画することで、ミシで生産されたブドウやハナをミシで消費する地産地消のサイクルを作り出し、ミシの再生に繋がるのではないかと考えました。



atelier Bos : Fumi Otosaka / Toshiyuki Kaga / Takayuki Sasaki
Colony Garden


1.CONCEPT & PROPOSAL

私たちは現在ミシにある、空家と空き農地をブルサの中心部に住む人に貸し出す、滞在型農業施設”コロニーガーデン”を提案します。

私たちは新しいライフスタイルを想定し、二つのタイプの農業システムを提案します。一つはミシの空家と農地を借りて住みながら、農業をする”ガーデンタイプ”。もう一つはミシに訪れる人が一日だけ農業体験をできる”インスタントファームタイプ”です。


私たちは主に西側の”ガーデンタイプ”について設計しました。
私たちは将来、空家が増えていくと考え、家が空家になる度に空家を貸家に改修します。そうすることによって、この”ガーデンタイプ”が村の西に広がっていくということを想定しています。


2.CASE STUDY (SYSTEM & DETAILS)


ここからはケーススタディを通じて説明します。私たちはAgricultural facility、Utility、Facility for farmer and visitorという、この提案に必要な3つのエレメントを提案します。


そして、この”ガーデンタイプ”をデザインするためのシステムを考え、それに基づいてそれらのエレメントを下の1-4のプロセスで配置します。


1, 空家、空き地からエントランスを設定する。
2, エントランスをつないだ中心にコアとなる施設をつくる。
3, 既存の敷地割りを利用し新たなグリットをつくる。
4, グリットをもとに農地とエレメントを配置していく。


今後、増えていくと考えられる全ての”ガーデンタイプ”はこのシステムによってデザインされます。


例えば、このシステムをあるエリアに適用したとき、下の図のようになります。


ここには空家と空き地を利用した5つのエントランスがあり、そのそれぞれに訪問者のための施設(ギャラリー、カフェ、ショップなど)を機能として入れました。
またそれを結んだ中心に広場と一体となったレストランをつくりました。



裏庭の貸し出し農地の様子



team AIR : Yuki Ishii / Natsura Sanada / Kaori Tanabu / Kohei Yamabi
Art In Residence

■Concept
 私たちのチームでは、草木で荒れている中庭や空き家等、ミシに点々とする有効に利用されていない場所を選別し、小規模な開発を行う計画を立てました。小規模に開発することによって、現在のミシの構造を崩すことなく、うまく棲み分けを行ないながら新たなを流れのレイヤーをつくります。
 まず数ある空き家の中から、特徴的に空き家が密集しているエリアを4つ選択し、それぞれの特徴を生かしたリノベーションを行うことにしました。それぞれのエリアでは、空き家が中庭を囲うように集合していたり、通り沿いに並んでいるなど、空間的に高いポテンシャルを持っていると考える場所を選択しました。
 次に、活用されておらず荒れている空地や中庭などから、特にポテンシャルが高いと考える4ヶ所を選出しました。
 そして最後に、小さな仕掛けを行う場所として、道の角や農地に視線が広がる場所など、もっとも小さなポイントたちを選びます。
このように小さく有効活用されていないけれどもポテンシャルの高い場所をそれぞれ選出し、それぞれ小規模な開発を行うことで、ミシのなかに連続するシーン展開で結びついた新たな流れが生まれます。

■Master plan
こうした開発コンセプトに対し、私たちはアーティスト・イン・レジデンスというプログラムを当てはめます。アーティスト・イン・レジデンスは、日本では特に農村の村おこしなどによく用いられるプログラムです。空き家や廃校舎のリノベーションなどにより、宿泊や創作の場所などを提供します。また、農村の豊かな自然と景色の中でサイトスペシフィックなアート作品も多く作られるなど、村のなかのそれぞれの場所や建築資源のもつ可能性をうまく取り込めるプログラムです。これによりミシの持つ魅力や資源を最大限に利用出来ると考えました。
それぞれの箇所の規模にあわせて、必要なプログラムを当てはめていきます。
まずこのコンセプトのなかでは最も大規模である各空き家のリノベーションには、アーティスト・イン・レジデンスの主たる機能であるアーティストの宿泊施設、アトリエ、ワークショップスペースや木工、映像などの特別なスタジオといった機能を持たせます。宿泊施設と創作施設はそれぞれの空き家群で両方の機能を担保することで、次に活用されておらず荒れている空地や中庭には、それぞれギャラリーや野外ステージ、駐車場、倉庫といったアーティスト・イン・レジデンスの活動をサポートする機能をひとつずつ配置しています。
 そして最後に、これら8つの小規模な点的開発をつなぐように、道の角や視野が開ける場所、川に近づける場所などポテンシャルのあると考えるポイントを選択し、ベンチ計画やサイン計画、アート作品の展示といった小さな仕掛けをいくつも施しました。


■インフォメーションセンター(Sanada Natsura)
橋を渡ったすぐ先にある場所はいくつかの廃墟および空き家が密集している場所となっています。この場所はミシのエントランス的な場所であり、非常にポテンシャルが高い場所です。ここに空き家のコンバージョンおよび新築によってインフォメーションセンター(カフェ、図書館、ショップ含む)を設計します。
建築自体もひとつのアート作品であるかのようなモニュメンタルな外観を意識しています。また建物の配置により、手前側の広場と奥に続いていく広い中庭空間とをゆるく分断することで、ミシエントランスとなる拠点を設計します。


■空き家リノベーション(1)(宿泊施設、アトリエ、ワークショップスペース等) (Tanabu Kaori)
 この場所はインフォメーションセンターから公園を経由し進んだ先にある、通り沿いに空き家がいくつか並んでいる場所です。通り沿いに並んでいる特徴を活かして、この場所での創作活動やアーティストと住民との交流がこの通りににじみ出すように設計を行ないます。1階部分は空き家の減築や、新設の建物の挿入によって道と連続して利用出来る外部空間を多く取り入れて設計しています。また2階部分は減築によって壁面をセットバックさせ、テラスを新たに設計することで、2階部分と道との関係性を創りだしています。


■空き家リノベーション(2)(宿泊施設、アトリエ、ワークショップスペース等) (Ishii Yuki)
 広場を囲むように並ぶ空き家の、レジデンス・スタジオへのコンバージョン。
長い伝統を持つ村特有の礎石・木造のマッシブな家々に、現代的なガラスのヴォイドヴォリュームを挿入した。そのため、既存の村のヴォリュームを壊すことなく、それでいて何が変わったのかを明確に示すことが可能になっています。また既存の街並みの中に相違点を作ることで、村が元から持っているポテンシャルが浮かび上がり、もう一度そこに光をあてることができます。


■ギャラリー (Yamabi Kohei)
 この場所は木々が鬱蒼としげる大変広い場所です。また各空き家改修によるアーティスト・イン・レジデンスの拠点から、道が新設で伸ばされており、4つの道の結節点となっている場所でもあります。この場所に4つの道の流れを束ねるギャラリーを設計します。設計においては主に2つのコンセプトを用いています。ひとつは斜面を削って平面を確保する際に生じる垂直面を、道の流れに沿って曲率を持たせながら建物内に巻き込むます。これにより、外部の道と内部空間を同質的な流れの連続空間としてデザインします。またそれぞれの建築外部のデッキと建築内部空間が、レヴェルを変えながら連続して展開するように断面的な操作を行ないます。こうすることで、各拠点同士、ギャラリーとそれに連なる4つの道、あるいはギャラリーの内部空間と外部空間とが空間的に途切れることなく連続的にシーンを展開していきます。


■最後に
 このようにミシのなかでそれぞれ問題を抱えながらもポテンシャルを持った場所を見つけ、小規模なリノベーションや新築を行ないます。私たちはこれにより、ミシの既存の構造や生活のシステムを壊すことなく、そのうえにアーティスト・イン・レジデンスのための新しい流れのレイヤーを重ねて行きます。
 そうすることによって、ミシの住民やミシを訪れる人々、ミシに滞在するアーティストたちとがうまく棲み分けながらも交流や創作活動が行われます。これら全ての人がミシというまとまりの中でひとつになり、ミシがより活動的で活性化した村となっていきます。





team Mega Village : Tatsuro Ueno / Shusuke Ohashi / Yoshitake Sasai
Mega Village


<リサーチ>

私たちはミシが抱える2つの問題に着目した。それは、ミシの農地の77%が有効に活用されていないことと、ミシの農業人口が減少していることである。それゆえ、ミシ独自での農業再生は困難であると考えた。さらに、ミシの南にはミシよりも小さな3つの村があり、ミシ単独での発展はこれらの村の衰退を引き起こすと分析した。<コンセプト>
以上の分析から、私たちは4つの村で協力しつつ農業を再生させることを提案する。私たちはこれを"Mega Village"と呼ぶ。地理的観点からミシとブルサ、ミシと3つの村の関係性を分析した際に、私たちはミシには4つの村をつなぐ拠点としての可能性があると考えた。そこで、ミシを4つの村の拠点として開発することを提案する。具体的には、3つの農村で作物を育て、ミシに運び、それらをミシで加工しブルサへと出荷するというシステムである。<開発プロセス>

(Process_01)
ミシの東岸が有効活用されていない現状から、Mega Villageの拠点をミシの東岸に計画する。まず、我々は生産部分、生産と既存をつなぐ接続部分、既存建築部分と3つのゾーン分けを行った。今回主に設計を行った部分は生産部分と接続部分であり、以下のようにプログラムを分担した。
大橋秀允が生産工場の設計を担当。
佐々井良武が農業学校とオリーブ加工場の設計を担当。
上野達郎が民宿と木材加工場の設計を担当。


(Process_02)
次に、3つの村と拠点となるミシを結ぶ搬入動線とミシとブルサを結ぶ搬出動線を計画した。それが緑のラインである。



(Process_03)
また、モスク周辺の人だかりとミシの北端部の観光スポットを接続するための歩行者専用道路を計画した。それば青のラインである。


(Process_04)
最後に、それらの人々が集まる場所として中心広場を計画した。<マスタープラン>

デザインエリアには、生産工場や食品・木材加工場、農業学校、民宿、レストラン、牧場、管理棟などがありそれらの建物は相互に関係し合っている。例えば、他の村の農業従事者が生産工場に搬入に来た場合、それを終えた後は、農業学校で食品の加工法を学んだり、実際に加工された物をレストランで食べることができる。また、農業学校の学生の場合は高度な技術を学校で学びつつ、生産工場でそれを実施することができる。さらに、観光客の場合は、木材加工体験や生産工場の見学、オリーブの加工などが体験できる。<パース><農業学校×オリーブ加工場 設計:佐々井良岳>


私は農業学校とオリーブ加工場を設計した。この建築は大きな屋根と長いルーバーによって構成されている。これらの2つの要素が広場の水平方向を強める。農業学生や観光客は、オリーブ加工と農作業を学ぶことができ、作業後には、デッキでさまざまな広場のアクティビティを眺めながら農作業で取れた作物やオリーブオイルを食べることができる。<生産工場 設計:大橋秀允>


この建築は農作物の加工を専門に行う工場である。
今までブルサへと働き場所を探しに行かなければいけなかった4つの集落に住む人々はここで働き場所を得る。


この建築は大屋根と基壇によって構成されている。基壇内部には加工のための工場があり、既存の地形、斜面の流れに沿って搬入、加工、包装、出荷と作業が行われるように計画されている。また、大屋根上部には散歩道が計画されており、屋根の上からの絶景を眺める事が出来る。また、作業風景も同時に見学できるように計画されている。


ゾーニングとしては広場側に図書室、直売所といった一般の人々も入って来れる機能を、反対側に就業者のための休憩所等のバックスペースを設け、その二つを工場という大きなボリュームで明確に区分するように計画されている。


工場で働く人は農業学校でランチをとったり、民宿で一休みをしたりする。逆に、農業学校の生徒は工場で研修をしたり、民宿に泊まった観光客は工場に作業風景を見学しにきたりする。大屋根の上の散歩道、広場のコンタから連続する直売所、図書室は
人々が集まる事で広場や民宿、農業学校とつながっていく。<ゲストハウス×製材所 設計:上野達郎>


私は4つの村の人々や観光客のための民宿と製材所を設計した。この建築は、構造壁と浮遊ボリューム、外部空間によって構成されている。キャンチレバーによって、階段室以外のボリュームはすべて地上面から浮いており、それらの浮いたボリュームを交互に配置することで、外部空間に光と影のコントラストを生じさせる。観光客や4つの村の人々は、このボリュームの下で影のバザーを楽しんだり、光のうつろいを感じながら読書を行ったりする。さらに、木製のカフェが農業学校の生徒や生産工場の従業員にひとときの安らぎを与える。<未来像>

4つの村の人々が働く場所を計画したことや現状の経済状況を改善したことによって、この写真のようにMega Villageシステムは、ミシの人口流出と農業問題を解決する。この拠点を中心として、その影響がミシや3つの村にも広がり、4つの村は新たなコミュニケーションやビジネスの場となり、さらなる発展をとげて行く。