ASB2010 Final Review in Sendai !!

日本語版


7月15日の最終講評会の成果物を日本語版で掲載します。

team ARC : Kazuhito Abe / Koya Utsumi / Haruka Suzuki
Agriculture×River×Children


1. MASTER PLAN
《コンセプト》
 私たちはMisiの東側に小学生向けの農業学校を計画しました。都市部の学校に通っている小学生が、一年に一度農業体験をするためにこの学校へやってきます。

《リサーチ》
 Misiには3つの魅力的な場所があると考えました。
 1つ目はモスク周辺。ここでは週に一度、街から商人がやってきてバザールを開きます。2つ目は村の北側にあるピクニックエリア。ここでは休日になると街から大勢の人がやってきてピクニックやバーベキューなどを行います。3つ目は川岸の空間です。木が生い茂り、心地よい木陰があります。


《設計》
 私たちはMisiには魅力的な場所が既にいくつも存在していると感じました。Misiに必要なことは、その魅力をより多くの人々が共有できるものとして引き出すことだと思います。そこで私たちはこれらの魅力的な場所をお互いに繋ぐ建築を設計しようと考えました。


2.DESIGN AREA

 敷地はMisiの東側のエリアです。設計ではリノベーションの手法を用い、“繋ぐ”ということを意識して、農業学校のためのドミトリー、図書館、バザールセンター、小学校を計画しました。敷地の中央にはPlazaとドミトリーを配置します。川沿いには図書館、バザールセンター、小学校を配置します。この川沿いの建築群をRiverside Architecturesと呼びます。
 ドミトリーに宿泊している子供たちはRiverside Architecturesを通って川岸へアクセスします。また、休日にバザールやピクニックに来た人々はバッファゾーンとしてのRiverside Architecturesを通って中央Plazaへアクセスします。


3.PERCEPECTIVES

プラザからドミトリーを見る



バザールセンターの内観



北側の川岸から図書館をみる

この農業学校とRiverside Architecturesによって、Misiの魅力が引き出され、村全体を活性化させることができると思います。



team happy : Yuri Akagaki / Takaaki Kikuchi
Stock Celebration !!

1.RESEARCH & CONCEPT

 ブルサは広大な農地を持っています。私達は周辺の農地とは異なったミシ独自の農業アイデンティティを形成することで、ミシの農業を再生しようと考えました。
 私達はミシを、隣接する都市ブルサの一部として捉えました。そして、ミシをブルサの中で「祝い」という機能を担う場所として位置づけました。なぜなら、ミシには古い街並が残り、自然が豊かで、ブドウ畑がありワインが生産出来るなど「祝い」の舞台になり得る可能性を持っているのではないかと考えたからです。そこで、「祝い」に特化した農業をミシの農業アイデンティティにしようと考えました。
 さらに、外から入ってきた収入をもとにミシの古い街並を保存再生することで、美しい街並とともに人々の祝いの記憶が蓄積されていくことを目指しました。そうすることで都市での次々と消費される「祝い」とは違った、蓄積される「祝い」を提案出来るのではないかと考えました。



2.MASTER PLAN

 私達は結婚式場やワイナリーと言った祝いに結びつくプログラムを軸にそって配置しました。さらに既存の建築をリノベーションしクラフトセンターやそこで働く人々の住宅を作ることで、新築と既存の建築で1つの軸を形作っていこうとしました。
 私達はミシの歴史建築の多い道とランドスケープと人々の活動を取り入れて軸を考えました。


3.ARRANGEMENT

これは1階部分の平面図です。
 私達の設計した建築は1つの道と、中央広場、花畑、そしてブドウ畑といった三つの広場を作ります。
 それぞれの建築はお互いに関係し合っています。中央広場からはブドウ畑が建物の間を通して見えるようになっています。建築のボリュームをずらしながら配置し、また2つの建築で道の幅を操作し広場と関係させることで変化に富んだシーンが展開することが目指されました。これはトルコのグランバザールをヒントにしたアイデアです。さらに、結婚式場は中央広場側の建築に置きながら、メイクアップルームをブドウ畑側の建築に入れると言ったように、片方の建築で機能をまとめてしまうのではなく、両方の建築が2つで1つの物として使われるように設計しました。



4.PERCEPECTIVE_01

 これは花畑からみた中央ストリートのパースです。
 スロープやブリッジが道の上を交差することで、人々の祝いに関係した活動が重なるようになっています。このスロープではワイナリーの生産工程が上から順に展開されるようになっています。ワインを生産する風景が建築の外までしみ出してきてくることで、物を作る行為が持つ祝祭性が道を通る人にも感じられるような空間を目指しました。


5.PERCEPECTIVE_02

 これはカーテン建築のパースです。
 動くカーテンは人々の活動を祝福しています。

ミシでこのような祝いをテーマとした建築を計画することで、ミシで生産されたブドウやハナをミシで消費する地産地消のサイクルを作り出し、ミシの再生に繋がるのではないかと考えました。



atelier Bos : Fumi Otosaka / Toshiyuki Kaga / Takayuki Sasaki
Colony Garden


1.CONCEPT & PROPOSAL

私たちは現在ミシにある、空家と空き農地をブルサの中心部に住む人に貸し出す、滞在型農業施設”コロニーガーデン”を提案します。

私たちは新しいライフスタイルを想定し、二つのタイプの農業システムを提案します。一つはミシの空家と農地を借りて住みながら、農業をする”ガーデンタイプ”。もう一つはミシに訪れる人が一日だけ農業体験をできる”インスタントファームタイプ”です。


私たちは主に西側の”ガーデンタイプ”について設計しました。
私たちは将来、空家が増えていくと考え、家が空家になる度に空家を貸家に改修します。そうすることによって、この”ガーデンタイプ”が村の西に広がっていくということを想定しています。


2.CASE STUDY (SYSTEM & DETAILS)


ここからはケーススタディを通じて説明します。私たちはAgricultural facility、Utility、Facility for farmer and visitorという、この提案に必要な3つのエレメントを提案します。


そして、この”ガーデンタイプ”をデザインするためのシステムを考え、それに基づいてそれらのエレメントを下の1-4のプロセスで配置します。


1, 空家、空き地からエントランスを設定する。
2, エントランスをつないだ中心にコアとなる施設をつくる。
3, 既存の敷地割りを利用し新たなグリットをつくる。
4, グリットをもとに農地とエレメントを配置していく。


今後、増えていくと考えられる全ての”ガーデンタイプ”はこのシステムによってデザインされます。


例えば、このシステムをあるエリアに適用したとき、下の図のようになります。


ここには空家と空き地を利用した5つのエントランスがあり、そのそれぞれに訪問者のための施設(ギャラリー、カフェ、ショップなど)を機能として入れました。
またそれを結んだ中心に広場と一体となったレストランをつくりました。



裏庭の貸し出し農地の様子



team AIR : Yuki Ishii / Natsura Sanada / Kaori Tanabu / Kohei Yamabi
Art In Residence

■Concept
 私たちのチームでは、草木で荒れている中庭や空き家等、ミシに点々とする有効に利用されていない場所を選別し、小規模な開発を行う計画を立てました。小規模に開発することによって、現在のミシの構造を崩すことなく、うまく棲み分けを行ないながら新たなを流れのレイヤーをつくります。
 まず数ある空き家の中から、特徴的に空き家が密集しているエリアを4つ選択し、それぞれの特徴を生かしたリノベーションを行うことにしました。それぞれのエリアでは、空き家が中庭を囲うように集合していたり、通り沿いに並んでいるなど、空間的に高いポテンシャルを持っていると考える場所を選択しました。
 次に、活用されておらず荒れている空地や中庭などから、特にポテンシャルが高いと考える4ヶ所を選出しました。
 そして最後に、小さな仕掛けを行う場所として、道の角や農地に視線が広がる場所など、もっとも小さなポイントたちを選びます。
このように小さく有効活用されていないけれどもポテンシャルの高い場所をそれぞれ選出し、それぞれ小規模な開発を行うことで、ミシのなかに連続するシーン展開で結びついた新たな流れが生まれます。

■Master plan
こうした開発コンセプトに対し、私たちはアーティスト・イン・レジデンスというプログラムを当てはめます。アーティスト・イン・レジデンスは、日本では特に農村の村おこしなどによく用いられるプログラムです。空き家や廃校舎のリノベーションなどにより、宿泊や創作の場所などを提供します。また、農村の豊かな自然と景色の中でサイトスペシフィックなアート作品も多く作られるなど、村のなかのそれぞれの場所や建築資源のもつ可能性をうまく取り込めるプログラムです。これによりミシの持つ魅力や資源を最大限に利用出来ると考えました。
それぞれの箇所の規模にあわせて、必要なプログラムを当てはめていきます。
まずこのコンセプトのなかでは最も大規模である各空き家のリノベーションには、アーティスト・イン・レジデンスの主たる機能であるアーティストの宿泊施設、アトリエ、ワークショップスペースや木工、映像などの特別なスタジオといった機能を持たせます。宿泊施設と創作施設はそれぞれの空き家群で両方の機能を担保することで、次に活用されておらず荒れている空地や中庭には、それぞれギャラリーや野外ステージ、駐車場、倉庫といったアーティスト・イン・レジデンスの活動をサポートする機能をひとつずつ配置しています。
 そして最後に、これら8つの小規模な点的開発をつなぐように、道の角や視野が開ける場所、川に近づける場所などポテンシャルのあると考えるポイントを選択し、ベンチ計画やサイン計画、アート作品の展示といった小さな仕掛けをいくつも施しました。


■インフォメーションセンター(Sanada Natsura)
橋を渡ったすぐ先にある場所はいくつかの廃墟および空き家が密集している場所となっています。この場所はミシのエントランス的な場所であり、非常にポテンシャルが高い場所です。ここに空き家のコンバージョンおよび新築によってインフォメーションセンター(カフェ、図書館、ショップ含む)を設計します。
建築自体もひとつのアート作品であるかのようなモニュメンタルな外観を意識しています。また建物の配置により、手前側の広場と奥に続いていく広い中庭空間とをゆるく分断することで、ミシエントランスとなる拠点を設計します。


■空き家リノベーション(1)(宿泊施設、アトリエ、ワークショップスペース等) (Tanabu Kaori)
 この場所はインフォメーションセンターから公園を経由し進んだ先にある、通り沿いに空き家がいくつか並んでいる場所です。通り沿いに並んでいる特徴を活かして、この場所での創作活動やアーティストと住民との交流がこの通りににじみ出すように設計を行ないます。1階部分は空き家の減築や、新設の建物の挿入によって道と連続して利用出来る外部空間を多く取り入れて設計しています。また2階部分は減築によって壁面をセットバックさせ、テラスを新たに設計することで、2階部分と道との関係性を創りだしています。


■空き家リノベーション(2)(宿泊施設、アトリエ、ワークショップスペース等) (Ishii Yuki)
 広場を囲むように並ぶ空き家の、レジデンス・スタジオへのコンバージョン。
長い伝統を持つ村特有の礎石・木造のマッシブな家々に、現代的なガラスのヴォイドヴォリュームを挿入した。そのため、既存の村のヴォリュームを壊すことなく、それでいて何が変わったのかを明確に示すことが可能になっています。また既存の街並みの中に相違点を作ることで、村が元から持っているポテンシャルが浮かび上がり、もう一度そこに光をあてることができます。


■ギャラリー (Yamabi Kohei)
 この場所は木々が鬱蒼としげる大変広い場所です。また各空き家改修によるアーティスト・イン・レジデンスの拠点から、道が新設で伸ばされており、4つの道の結節点となっている場所でもあります。この場所に4つの道の流れを束ねるギャラリーを設計します。設計においては主に2つのコンセプトを用いています。ひとつは斜面を削って平面を確保する際に生じる垂直面を、道の流れに沿って曲率を持たせながら建物内に巻き込むます。これにより、外部の道と内部空間を同質的な流れの連続空間としてデザインします。またそれぞれの建築外部のデッキと建築内部空間が、レヴェルを変えながら連続して展開するように断面的な操作を行ないます。こうすることで、各拠点同士、ギャラリーとそれに連なる4つの道、あるいはギャラリーの内部空間と外部空間とが空間的に途切れることなく連続的にシーンを展開していきます。


■最後に
 このようにミシのなかでそれぞれ問題を抱えながらもポテンシャルを持った場所を見つけ、小規模なリノベーションや新築を行ないます。私たちはこれにより、ミシの既存の構造や生活のシステムを壊すことなく、そのうえにアーティスト・イン・レジデンスのための新しい流れのレイヤーを重ねて行きます。
 そうすることによって、ミシの住民やミシを訪れる人々、ミシに滞在するアーティストたちとがうまく棲み分けながらも交流や創作活動が行われます。これら全ての人がミシというまとまりの中でひとつになり、ミシがより活動的で活性化した村となっていきます。





team Mega Village : Tatsuro Ueno / Shusuke Ohashi / Yoshitake Sasai
Mega Village


<リサーチ>

私たちはミシが抱える2つの問題に着目した。それは、ミシの農地の77%が有効に活用されていないことと、ミシの農業人口が減少していることである。それゆえ、ミシ独自での農業再生は困難であると考えた。さらに、ミシの南にはミシよりも小さな3つの村があり、ミシ単独での発展はこれらの村の衰退を引き起こすと分析した。<コンセプト>
以上の分析から、私たちは4つの村で協力しつつ農業を再生させることを提案する。私たちはこれを"Mega Village"と呼ぶ。地理的観点からミシとブルサ、ミシと3つの村の関係性を分析した際に、私たちはミシには4つの村をつなぐ拠点としての可能性があると考えた。そこで、ミシを4つの村の拠点として開発することを提案する。具体的には、3つの農村で作物を育て、ミシに運び、それらをミシで加工しブルサへと出荷するというシステムである。<開発プロセス>

(Process_01)
ミシの東岸が有効活用されていない現状から、Mega Villageの拠点をミシの東岸に計画する。まず、我々は生産部分、生産と既存をつなぐ接続部分、既存建築部分と3つのゾーン分けを行った。今回主に設計を行った部分は生産部分と接続部分であり、以下のようにプログラムを分担した。
大橋秀允が生産工場の設計を担当。
佐々井良武が農業学校とオリーブ加工場の設計を担当。
上野達郎が民宿と木材加工場の設計を担当。


(Process_02)
次に、3つの村と拠点となるミシを結ぶ搬入動線とミシとブルサを結ぶ搬出動線を計画した。それが緑のラインである。



(Process_03)
また、モスク周辺の人だかりとミシの北端部の観光スポットを接続するための歩行者専用道路を計画した。それば青のラインである。


(Process_04)
最後に、それらの人々が集まる場所として中心広場を計画した。<マスタープラン>

デザインエリアには、生産工場や食品・木材加工場、農業学校、民宿、レストラン、牧場、管理棟などがありそれらの建物は相互に関係し合っている。例えば、他の村の農業従事者が生産工場に搬入に来た場合、それを終えた後は、農業学校で食品の加工法を学んだり、実際に加工された物をレストランで食べることができる。また、農業学校の学生の場合は高度な技術を学校で学びつつ、生産工場でそれを実施することができる。さらに、観光客の場合は、木材加工体験や生産工場の見学、オリーブの加工などが体験できる。<パース><農業学校×オリーブ加工場 設計:佐々井良岳>


私は農業学校とオリーブ加工場を設計した。この建築は大きな屋根と長いルーバーによって構成されている。これらの2つの要素が広場の水平方向を強める。農業学生や観光客は、オリーブ加工と農作業を学ぶことができ、作業後には、デッキでさまざまな広場のアクティビティを眺めながら農作業で取れた作物やオリーブオイルを食べることができる。<生産工場 設計:大橋秀允>


この建築は農作物の加工を専門に行う工場である。
今までブルサへと働き場所を探しに行かなければいけなかった4つの集落に住む人々はここで働き場所を得る。


この建築は大屋根と基壇によって構成されている。基壇内部には加工のための工場があり、既存の地形、斜面の流れに沿って搬入、加工、包装、出荷と作業が行われるように計画されている。また、大屋根上部には散歩道が計画されており、屋根の上からの絶景を眺める事が出来る。また、作業風景も同時に見学できるように計画されている。


ゾーニングとしては広場側に図書室、直売所といった一般の人々も入って来れる機能を、反対側に就業者のための休憩所等のバックスペースを設け、その二つを工場という大きなボリュームで明確に区分するように計画されている。


工場で働く人は農業学校でランチをとったり、民宿で一休みをしたりする。逆に、農業学校の生徒は工場で研修をしたり、民宿に泊まった観光客は工場に作業風景を見学しにきたりする。大屋根の上の散歩道、広場のコンタから連続する直売所、図書室は
人々が集まる事で広場や民宿、農業学校とつながっていく。<ゲストハウス×製材所 設計:上野達郎>


私は4つの村の人々や観光客のための民宿と製材所を設計した。この建築は、構造壁と浮遊ボリューム、外部空間によって構成されている。キャンチレバーによって、階段室以外のボリュームはすべて地上面から浮いており、それらの浮いたボリュームを交互に配置することで、外部空間に光と影のコントラストを生じさせる。観光客や4つの村の人々は、このボリュームの下で影のバザーを楽しんだり、光のうつろいを感じながら読書を行ったりする。さらに、木製のカフェが農業学校の生徒や生産工場の従業員にひとときの安らぎを与える。<未来像>

4つの村の人々が働く場所を計画したことや現状の経済状況を改善したことによって、この写真のようにMega Villageシステムは、ミシの人口流出と農業問題を解決する。この拠点を中心として、その影響がミシや3つの村にも広がり、4つの村は新たなコミュニケーションやビジネスの場となり、さらなる発展をとげて行く。