その場にふさわしい空間を考える

TA赤垣です。松原先生による課題概要をup致します。


せんだいメディアテークの改修を通して「その場にふさわしい」空間を考える


●スタジオの目標:
みなさんに今回考えてもらいたいのは「その場にふさわしい」建築のあり方です。せんだいメディアテークの2階と7階の再設計を通して、このテーマについて考えてもらいたいと思っています。あなたにとって、どういう建築が、「その場にふさわしい」と見えているでしょうか?設計者である我々はそうした建築とどうつきあえばいいでしょうか。もちろんそういう建築を目標にしない、という態度も、つきあい方の1つです。そうした態度も含めて、「その場にふさわしい」建築のあり方はどういうものか、この課題を通じて表明してほしい。
 建築をつくることは、モノを通して自分の考えを提示することです。建築をつくることが、設計という行為を通す以上、そこには計画とその実現があり、そこに何らかの意思がこめられることは不可避です。意思をこめないふりをする設計者もいますし、エゴ丸出しの意思を建築に付帯させる設計者もいます。その善し悪しはここでは言わない。少なくとも言えるのは、建築とは設計者の意思が抜きがたく付帯しているものだということです。みなさんに考えてもらいたいのはこの意思との付き合い方でもあります。こうした建築に必ずついてくる設計者の意思と「その場にふさわしい」という文脈主義はどうおりあいをつけるべきか。
「その場にふさわしい」というのは「美しい」とか「使いやすい」とかいう評価とは違います。結果的に美しかったり使いやすければそれはそれでいいと思うんだけど、ここでみなさんにもっとも優先して考えてほしいのは「その場所にふさわしい」建築のあり方についてです。それはより文脈的であり、周辺に依存しており、関係の中でできあがっているはずのものです。みなさんに、今そこにある関係に敏感になってもらい、そこになにか新しいものを加えてほしいと思います。そうしたふるまいにおいて、各履修者がお互い切磋琢磨する。そういうスタジオにしたいと思います。
このスタジオは地震と関係しています。毎年海外でやっているスタジオが今年は仙台でやりますし、今まであった他校との交流も今年のこのスタジオではないです。メディアテークの2,7階だけですから内装設計です。中国で考えていた大きい計画とは違いますね。これは地震の負の影響と言わざるを得ない。
しかし同時に、私たちがこの地震でまわりのコンテクストをもう一度深く考えさせられる状況に置かれていることを、私はここでみなさんといっしょに受け止めたいと思っています。これは負の影響ではない。前向きに地震を利用したいと思っています。これは我々にできる、地震に負けない、という態度の表明の一種でもあると思っています。それから私はここで壊れたものを直すとか、新しい都市を作るチャンスだとか、そういうことを言っているのではありません。それは他の人にやってもらえばいいです。私たちがここで、大学院のスタジオとして集中すべきなのは、失われる前の状態に敏感になり、それをよく思い出し、なにかそこに新しいものをつけたすこと、です。私たちの前でたくさんのものが失われてしまいました。それは比喩的な意味でなく現実的にです。その現実を前に、みなさんとどこまで知的に強いものを構想できるか、がこのスタジオの目標です。



●具体的な課題設定:
天井が壊れてしまったメディアテークの7階と、2010年の開館10周年のときに配置換えを行った2階のプログラムの組み直しと再設計
・プログラム上の条件としては以下
→2,7階の現行のプログラムはそのままとするが2つのフロアでのシャッフルはありうる
→新築時、10周年記念のときのプログラム組みかえの経緯をグループワークでよく調べてありうべき組み換えを検討する
→2フロアともトイレは動かせない。7階シアターも位置は不動(床が上がっているので位置は変えられないが壁の仕様を変えるのは可能)。あとの緒室は自由に動かせる。
→2階の子ども図書館はいささか扱いが違うので注意。リサーチの上でどうすべきか判断してルール決める。
・大学院生のスタジオとしてコンテクストに敏感になるための手掛かりとして、材料について特化した設計案を作ってほしい。「その場にふさわしい」ものの手掛かりになると思われる。
→今までのメディアテークで使われている材料に着目し、それを使った「韻を踏んだ設計」の手掛かりにする(亜鉛鉄板のパンチング、押出中空セメント板、プロフィリットガラス、フロストミラー、ファインデッキなど)
今回の課題は新築じゃないし、建築じゃなくて内装ですが、既存のコンテクストに敏感になった、細かい設計をすることが求められています。



●おおまかなスケジュール:
・5月から6月上旬→3週間程度のリサーチ
初回にグループ分けし、リサーチ結果を共有するようにする。リサーチの結果に従って、そのあとの改装再生デザインのルールを明確化する。smtの内部要求や過去の改築の経緯、使用されている材料とメーカの調査、建設時の設計の意図、などを班にわかれて作業。
(9日に分かれて作業を始めるか、15日にグループに分けるかは小野田先生に決めていただく)
・6月中旬から7月前半→詳細図を含めた具体的な設計
2階と7階の改装再生デザイン。リサーチの結果でルールを明確化してスタートラインをそろえて始める。やはりチームでやるとよいと思う。リサーチとは別にうまく混ざり合わせた設計チームを再編成して作業。各班とも2階と7階の2つのフロアの関係をうまくからませるのがポイント。
・7月のプレゼンテーション
「その場所にふさわしい」メディアテークの2,7階の改装再生提案の発表
断面詳細図と天伏図も描くことにしたい。細かい図面をびっちり描くのと同時に、案としてのイマジナリ―な部分も出してほしいし、材料についての提案、失われたものへの態度を示してほしい。



●参考資料:
非線形の出来事(これは1人1冊ほしい、設計の経緯がよくわかる)
・GAの大型図面集(これがあると詳細図描けます)
メディアテークコンセプトブック(NTT出版、プログラム再考の上でいいか)