都市計画について




仙台市の都市計画の歴史について
 <図1、2、3>
 資料集成を見ると、仙台市都市計画歴史年表に「せんだいメディアテークの完成」も加わっており、都市の中で重要な建物として位置づけられていることが分かる。戦後の復興も公共交通体系を重視し、かつての仙台の市街地規模に適合する市電系統を生かし中心市街地のネットワークが自然に形成される骨格パターンを採用している。その後もこの骨格を保持したまま都市計画が進められており、歴史の流れを蓄積しながら発展してきた都市であるといえる。
 2000年の仙台市中心市街地活性化基本計画を見ると、せんだいメディアテークは都市計画の行政コア、都心住居、にぎわいのシンボルゾーン等の結節点に位置している。中心市街地の商店街アーケードから賑わいをどう呼び込むか、定禅寺通りのデザインが重要である。


時間班、なかなかよくまとまってます。都市計画について、あまり言うことはないけれど、smtが完成するころにちょうど観光環状バス「ループル」が開通しました。メディアテークの前にバス停を作るというので位置を市と協議したのを覚えています。竣工間際にはメディアテークの北側にミニ映画館ができたり、カフェの開業が集中しました。こういうのって公共建築が街を変えている具体例だなと思った記憶があります。つまりこの建物はもちろん大きな計画の中に位置づけられているんですが、これができることでミクロに周囲に影響を及ぼしているわけです。それに気付くことが重要。みなさんの構想する改装計画も、そうした影響を及ぼしうる力を備えるべきです。そこでイベントが起きれば周りになにか波及があります。
よく話すいいエピソードを。7階では今でもシニアネットの方々が会議室を使っているのでしょうか?高齢者のヴォランティアグループで、企業から寄贈をうけたパソコンを使って高齢者にPCの講習会を開いている方たちです。竣工後に一度お話を伺ったことがあります。smtができる前はこの活動は別のところでやっていたそうですが、ここに移ってから参加する高齢者の服装が変わったとおっしゃるんですね。それは7階だとまわりに若者が多く、やっぱりそういう人たちに囲まれていると高齢者も自分から身だしなみに気を遣うようになると。建築は人の流れを作り、人の所作を変えます。





仙台市のイベントについて
 <図4、5>
 図は、仙台市の主なイベントの活動範囲を示したものである。「青葉祭り」や「とっておきの音楽祭」「定禅寺ジャズフェスティバル」の際には、活動が面的に広がっている。一方でクラシックフェスティバルは活動が点であるが、ホールの隣接する地下鉄駅4つを連結させて「仙台市」を広く用いている。「七夕祭り」は商店街アーケードが中心、「光のページェント」は定禅寺通が中心となっており、どちらもメディアテークも会場となっているが、イベントへの関わり方や位置づけは異なると思われる。






■smtでのイベント実施の型■

smtにて行われたイベントについて、下のような表を作成し、これをもとに分析をしました。


これいいですね。伊東さん見たら喜ばれますきっと。みなさんの改装案はイベントも一緒に企画してこういうダイヤグラムまで描くとか、あるいは今のイベントを改修前後で比較するとこのダイヤグラムがどう変わるかまで描いてほしい。



 大きなイベントや催し物の際、複数のフロアを連動させて行われているイベントがある。その中で、7Fが連動されているもののみをピックアップした。以下に取り上げた代表的なイベントだけでなく、7Fを含むフロア連動型のイベントに多く見られる傾向として、
 1F、5F、6Fで講演会・ライブ・インスタレーション・展示等の、市民の交流を促す催しを行っている際に、
 7Fではその内容を補完するような、やや小規模のワークショップや映画上映に使用される事が多いことがわかった。普段できないような制作の体験が出来たりするが、一方で展示等の内容の専門性が高くなってしまっていたりもする。

<としょかんメディアテークフェスティバル>
時期:年に一度、1月末に一日のみ開催
主催:としょかん・メディアテークフェスティバル実行委員会 仙台市民図書館 せんだいメディアテーク

手で読む本の展示や、絵本の中のシーンやお料理を再現するなど、ただ読むだけではない、新しい本の楽しみ方をバラエティ豊かに提案。

「シャワー効果」
7Fのアプローチしやすい位置に人気団体 (絵本の交換) を配置。利用者は7Fの後に各フロアを降りながら回っていく。効果として、1F・図書館・たまに7Fの会議室しか利用しないような主婦層も、絵本の交換には多く来たり、毎年同フロアで奥の方でやっている映画上映の団体の客数も、前年度に比べて増えるなど、7F全体へ良い影響が出た。


7階のシアターでフリマ関係のイベントしたときはすごかったですね。ゴスロリ系の若者がシアター付近のエレベータを埋め尽くしてた。ああいう使用者のミックスを建築が起こせたら面白いです。「シャワー効果」っていささか古くないですか。今ではもう少しいろんなマーケティング手法はあるでしょう。百貨店の各階のエスカレータ周りにベンチを置いたりするのが最近だと目立ちますね。


<仙台短編映画祭>
from 2001
時期:毎年9月〜10月に3、4日間開催。
主催:仙台短篇映画祭実行委員会、せんだいメディアテーク

仙台市内ではスクリーン上映される機会の少ない「短篇映画」をぜひ多くの人たちに観てもらいたいという思いから始まった。

上映実績ー年によって幅有り。おおむね20本〜40本ほど。
<せんだいデザインウィーク>
from 2004
時期:11月半ばや「SENDAI 光のページェント」の期間に合わせて、1週間ほど開催。

仙台を中心とする東北のデザイン団体が集結し、「せんだいデザインウィーク」として開始したユーザー視点のデザイン啓蒙活動は、韓国中国等の東アジア地域を含めたグローバルなデザインの交流をめざしており、

・参加団体
  宮城県印刷工業組合(DGT)
社団法人 日本ディスプレイデザイン協会(DDA) 東北地区
社団法人 日本建築家協会(JIA) 東北支部宮城地域会
社団法人 日本サインデザイン協会(SDA) 東北地区
  社団法人 インテリア産業協会東北支部
  宮城インテリアコーディネータークラブ
  仙台クリエイティブ・クラスターコンソーシアム
  東北芸術工科大学産学官連携プロジェクト


・期間中全イベント
展示: ex. デザイン団体独自企画展示、街中グッドデザイン展、
企画: ex. アジアとのデザイン・コラボレーション、デザイングランプリ TOUHOKU、オープニングパーティー

セミナー: ex. でまえセミナー 、デザインセミナー








<せんだいデザインリーグ卒業設計日本一決定戦(SDL)>
from 2002
時期:3月10日前後から1週間
主催:仙台建築都市学生会議、せんだいメディアテーク (smt)

公開審査とその後の展示を行う。
来場者数は年々増加し、今では4000人を越す。


<開館10周年記念イベント>
2010年 10月中旬〜12月26日

ABCの3事業有り

A:展示、アートプロジェクト
  @1Fオープンスクエア、1Ftube付近、smt6Fギャラリー4200、smt3F市民図書館、smt7F美術文化ライブラリー、7Fスタジオ
  主催:仙台市民文化事業団

B:トークセッション
  @smt1Fオープンスクエア

C:映画上映
  @7Fスタジオシアター
  3期(4日間)、各複数作上映



ヒアリングで浮かび上がった事




 ヒアリングから浮かび上がった問題点を図面上に示しました。これまでカーペットであったために実現されなかったフロア全体の飲食の解禁をしたいとの事。また自由なレイアウトになっているものの、ガラス張りである事や、家具の移動しづらさからの制約が大きかったことがあげられました。隣の声が聞こえるという距離感は受け継ぎたいとおっしゃっていました。また、自分たちの利用している実感として、7Fはスタジオは予約して利用するような印象があり、ふらっと利用しづらい先入観のようなものがあったり、また勉強している人が多く、利用者が固定している印象があります。


これはいいヒアリングのまとめですね。こういう事実に対してどう向き合うか、というところからデザインを始めてください。これらのまとめは考えるに値するポイントになりそうです。





 改装にあたって、スタッフの方はこれまで以上の外部との連携・発信の強化を考えているということがヒアリングから浮かび上がって来ました。なかでも気になった、USTREAMスタジオについて、要求される物として音響・映像・証明・配信設備をあげてみました。なかでも防音と照明をどうするかは設計に大きく影響しそうに思いました。


まあそう難しくないんじゃないでしょうか。音と光の問題だけだったらsmtの中でしたらどこでも拾えるわけだし。音を隔てるためには今館内で使っているセメントパネルで、OAフロア面下のコンクリートから天井上の耐火被覆上の鉄板構造までをふさげばいいだけです。トイレの外周壁と同じ扱いでできます。
 そういえば設計のとき、テレビ放送ができる対応を考えました。2階から上の西面の一番南側のドアを見てください。そこにはドアの下に20センチ角くらいの小さな開き戸が別についているのがわかるでしょうか。これは床上を転がす通信ケーブルを通すためのドアです。2階より上の西側壁はすべて防火区画なのでドアはスチールの防火戸で各階はデッキでつながっています。開館後に各階のイベントにテレビカメラが入るようなことが発生したら、1階に電源車が来てカメラが各階に入り、同軸ケーブルがカメラと電源車をつなげる必要がある。ケーブルは西側の避難階段を使い、室内外のケーブルのまたぎは南西角のドアにしようと想定したんでした。これはドアの詳細を決める直前にNHK仙台放送局にヒアリングに行って小ドアの寸法やケーブリングの実際をヒアリングして決めています。今は全部無線で飛ばせるからもっと楽でしょう?あまりシリアスにならないでもいい気がします。ぜひUSTREAMスタジオ考えてください。





ここからは〈ゆるやかな組織体制〉について考えます。
ヒアリング内で、smtの支援を受けて、smtの外へ飛び出して、現在活躍している団体がいくつかあるというお話を伺いました。
そこで時間班では、smtとは市民や企画団体や企業などをマッチングする機会を提供するシーンである、という共通の認識をもちました。メディアセンターとして情報を発信しているだけでなく、外のブランチになっている可能性に焦点を当ててリサーチを進めました。

下記で挙げる、およそ60の団体はsmtにとっての活発な顧客だと、捉えることができます。顧客たちが年に数回開催する大イベントや、小さな集いをsmtは見守ってきたようです。その団体の規模や、目的に合わせたアドバイスに始まり、時には連携を生みそうな企画者同士の親交を繕ったり。そのようなことから、せんだいと言えば…というイベントがsmtを拠点として誕生している背景がわかりました。

また内部の組織形態からも、スタッフからの企画や持ち込み企画等が、同一の層でやりとりされていることを知り、大きな可能性を感じました。外部ディレクターの介入なく、これまでのイベントを繰り広げられたことを基盤に、かつてなかった運営モデルの提案などにも学生サイドからアイデアを出せる機会かも知れません。



これは、具体的にsmtが市民団体とイベントを発生させるときのスタンスについてです。民間の規模では、予算が成立しない場合にsmtが主催となって、補う姿勢をとっていることが分かります。


へーこういうのは知りませんでした。なにかこの再設計を機会にみなさんでイベントをしかけたらどうですか?




ここでは事例として〈シアトル図書館〉を挙げます。smt同様、従来のフラットな図書館を問題として掲げ、フロア同士を切り離し、一部を縮小または膨張させるというアイデアを提案しています。
またヒアリング内でsmtは10年間で、pcのスペックは目まぐるしい変化を遂げたというお話を聞きました。そこで、これらの建築と情報の時間的な変化をデザインキーワードにすることにも可能性を感じています。



5Fの情報中枢エリアはまさに転換を迎えようとしているライブラリーを象徴的に表していると思います。個人的にはチャットによるレファレンスなど、わくわくするアメニティに溢れているように感じました。

また、シアトル図書館を代表に、アメリカの図書館ボランティアについて調べました。アメリカの公共図書館は、コミュニティの文化の拠点として地域住民と密接に関わりあいながら発展してきたことで、住民は利用者として図書館を利用するだけでなく、図書館を支えるためにさまざまな活動を行っています。その多くはボランティアによって支えられており、「図書館友の会」を基盤として活動することが多いそうです。図書館ボランティアは、図書館と一般住民を結ぶ架け橋として、アメリカの公共図書館において欠かせない存在となっています。

「図書館友の会」とは、図書館の支援を目的に設立された団体で、友の会の支授形態は多様であるものの、資金調達活動はその中核的な活動となっています。図書館友の会は個々の団体により活動は異なりますが、図書館サービスのアドボカシーを目指すという点で共通の理念を持ち、その理念を実現させるためにボランティア活動を含む様々な支援活動を行なっています。

また興味深い点としては、友の会の多くは会員制であり、会員は会費を納めて図書館支援活動に従事することが挙げられます。たとえばクリーブランド公共図書館友の会の会員制度を例にとると、高齢者・学生会員($10)、個人会員($15)、家族会員($25)、「収集家」($50)、「愛書家」($100)、「守護者」($500)のランクに分かれ、また友の会のメンバーになると会員種別によって異なるいくつかの特典が用意されているようです。

活動としては、図書館アウトリーチプロジェクトとして病院に図書を配送するほか、乳幼児プロジェクトでは、病院で新生児と母親に図書と役に立つ資料を配布したり、夏季には読書会、スライドの映写会、作家を囲む会、朗読会などを主催しているようです。

友の会では館長、図書館理事会、図書館職員と連携を取りながら、図書館とコミュニティに対して図書館活動にかかわる様々な活動を行っている点など、smtを母体とした場合のイメージなどに何か還元できるかも知れません。


そうですね、シアトル以外にもいい例があるでしょう。図書館だけでなく、先進的な試みをしている公共建築というのはあるでしょうから。イギリスのエデン・プロジェクト(ニコラス・グリムショウ設計のミレニアムプロジェクト)も、巨大な工業遺産を植物園に再生した例ですが、確か入場料じゃなくて寄付金として来場者からお金を徴収して税金支払いを抑えているとか聞きました。あれも地元の市民グループがかなり施設の運営にコミットしているそうです。調べてみてはどうでしょうか。

あとはどうやってこれらのばらばらな事実をデザインに結び付けていけるかですね。みなさんに期待しています。