5/24小野田先生エスキス1

TA赤垣です。松原先生にさっそくコメントを頂きました。ありがとうございました。(前回の日記)

今日は、第一回のエスキスの様子について報告致します。
時間班、空間班、モノ班の3つに分かれて、リサーチの報告を行いました。(オープンスペースにて)

作業場所も無い状態で、手探りながらも頑張っているなぁと感じました。
第一回のエスキスが終わった訳ですが、もう一度、じっくり松原先生の課題概要を読み直してみるのもいいかもしれません。小野田先生からは「韻を踏む」ということの重要さを指摘されましたが、なかなか難しい印象を受けました。「韻を踏む」ということについて、松原先生からも何かアドバイスがあればよろしくお願い致します。


ああ、やっぱりあのトンチクの空間は偉大だったんだなあと写真を見て思いました。みなさんが場所がないまま作業をしているのには頭が下がります。
韻を踏む…たくさん例があります。宮城県立美術館はどうですか?佐藤忠良記念館が増築されています。前川事務所の設計だと思いますが韻を踏んでませんか?あまりうまくない?私の好きなのは東大の本郷キャンパスの香山先生の増築(正門からの伸びる建物群の屋上の増築)で、あれも韻が効いてます。ヌヴェルの「ホテル・サン・ジェームス」は、古い修道院とホテル増築部分の区別がつかない巧みな押韻です。いろんな韻の踏み方があるんだけど、ここではみなさんの教育のためにも、ぜひ特定の材料を利用/に着目して韻を踏んでほしい。今のメディアテークに使われている建材や、そのシリーズの別型番の建材をテーマにした改装を考えてほしいです。
・西側デッキや6階天井、中2階エスカレータ踊り場の床にある日鉄ファインフロア
(ニッケンビルド、6階天井のはプレーンタイプで別工場で黒ジンク仕上げして色をおとした。西側デッキのはノンスリップ加工のメッキ仕上げ)
・7階の内装仕切りや6階の外壁で使っているプロフィリットガラス
(日昌グラシス、上下でとめれば結構な長さで立てられる)
・各階トイレなどで使っている押し出し中空セメント板
(smtでは三菱マテリアルの「メース」を使いましたが、同等品にノザワの「アスロック」もあります。smtではプレーン品を使っていますが、ラウンドしたコーナー役物やでこぼこがあるリブつきパネルもあります。使用を検討してはどうでしょうか)
・2階のテント・ファブリック
(これについては結局株式会社布の手配した特注オーガンジーカーテンを使用していますが、検討時にはいろんな可能性を探っていました。日本ウエーブロックからシートサンプルをとったり、ペローが使っているワイヤーコンベアネットのサンプルを取ったりですね。)
・各階北側にあるレタンガラリのアングルルーバー
(設計時はクリアのFRPパイプも検討していたんですが、可燃物ということで断念しました。FRPはクリアだときれいなので使いたかったんですが…まあ今のLアングルルーバーもずっしりとしていて結構気に入ってます。岩出山中学校のテラスの手すりで山本理顕さんが使っています。)


モノ班はどんどん電話して各メーカさんからサンプルとカタログをとりよせましょう。他の班の人も自分が設計するとき使えそうなサンプルがあればモノ班にお願いしてとりよせてもらう。内装では可燃物は使えませんので、その前提ははずさない。


今回は白模型にしない。みなさんが具体的に材料を知り、模型も具体的につくる。いいですね。



お互いにどんどん質問、指摘し合いましょう。


以下、各チームの発表内容と感想です。


時間班(平井・新藤・山田)

2010年のレイアウト変更で2Fと7Fにどんな変化があったのかを位置関係で把握し、その他不備がある点・改善点を発表した。また、地震がなかった場合の2011スケジュールから、イベントと部屋の関係性を把握した。
先生の指摘と皆での議論から、5.25のヒアリングで把握する事と、今後の方針については、以下の事が示された。
・組織図や、運営モデルとなっている事例(もしあれば)を教えていただくこと
・smt内で行われる利用者主体の優れたプロジェクトが開催される際の、smt(主に7F)の使い方を伺う
・いままでに良かったイベント、実現させたいイベント、実現させたかったが何らかの障害により実現出来なかったイベントを伺う
を主に行い、直近では
・良い建築事例('01以降)や、公共建築の論文を当たり、本日smtで把握した部分をピックアップし、照らし合わせる作業を行う。(新藤)


一度こういうことを調べだすと、どんな建築にもこういう設計意図があることがわかるようになります。仙台には面白い公共建築がたくさんあります。県立図書館、県立美術館、地底の森ミュージアム、文学館などなど。このリサーチを終えたころにいろいろ見に行くと、学ぶことは多いです。


モノ班(山崎・コウ・青島)

今回のエスキスにあたって、「モノ」班は7Fにおけるモノ(天井・床・壁・スキン・チューブ・家具)についてリサーチし、気付いたことをブレストしていった。その結果出てきたキーワードは、“方向性”“色”“素材”“高さ”であり、それらがあるルールに基づいて構成されていると判断。空間全体は均質さを感じさせるが、それ故家具が自立性を持ち、空間を構成していることを理解できた。次回はモノのリスト作成及び、家具、収納、照明について細かくリサーチし、空間や人間の行為とどうリンクしているのかを考察する予定です。今まであまり触れてこなかったジャンルですがこれを機に極めていきたいと思います。(山崎)


極めてください。楽しみです。smtについては竣工時にいろんな紹介記事があります。新建築とGAのみでなく、建築知識、建築技術(確か私ここに照明の説明文書きました)などもあたる。


空間班(中村、佐藤、片桐、遠藤)


<空間チーム>
今回ブログ担当の中村です。
空間チームは各階の空間を構成する要素である天井、床、カベの主に内装材について表にまとめ、さらに被害をうけた部分はどこであるかなどを視覚的にわかるよう図面にプロットしました。特に、なぜ7階だけ天井が落ちたのかという観点で、天井を釣るのが長すぎたとか、7階だけ天井に壁が勝っているので天井が壁にぶつかってプロフィリットガラスが割れたなどの考察を加えました。


天井がなぜ落ちたかはいろんな検討がされて理由もほぼ明らかになっています。今度エスキスで少しお話しましょう。『日経アーキテクチュア』2011年5月25日号で東大の川口健一先生が天井の話をされていますが、川口先生も構造の佐々木睦郎さんとsmtにお見えになり、天井落下の原因について意見を出していただいています。(ちなみにこの号、奥山恵美子仙台市長のインタビューが出てます。読みましたか?大変示唆的です。)
なお、smtの多くの壁は天井より勝ってます。壁の多くは二重床にも勝っています。7階だけが勝っているわけではありません。


そして小野田先生に指摘された点は主に次の3つです。

・「韻をふむ」 タイルの寸法と天井の目地を合わせたりと細かいところも考えてあり、そのモデュールに着目して空間を構成するルール、原理のようなものを探したほうがよい。時間チームの調査からでてくる人員配置・プログラムの変更、それにより要求される空間の提案等があったときにも、そのモデュールにのっとり(先生はそれを「韻をふむ」と表現されていました)さえすれば、素材や壁面位置等を変更しても違和感なく再構成することができるため、まずは平面図をトレースしたり実測したりしてその「韻」を探すべき。また、照明、空調についても同様に「韻」を見つける。

・「事例研究」 国内、海外での優れた建築における素材の扱い方(隈研吾の高分子化合物(プラスチック)ルーバーなど)を調べ、素材の扱いについての基礎知識をつける。

・「カタログ」 現在メディアテークで使われている素材に至るまでに、様々な素材が検討され、建築のコンセプトとの合致やコストの面から選定されているはずである。震災を経た今、ふさわしい素材は他にもあるかもしれないので、可能性のある素材をカタログにして、そこから改めてどれを選ぶべきかをブレストできる資料が作ったらよいのではないか。

以上のように先生には、抽象的ではなく具体的に設計に使えるルールを探すということと、メディアテーク内のことだけでなく外に開いて調査を進めるということを指摘していただきました。
今後は30日の7F再調査に向けまず図面から「韻」を読みとり、当日の実測や目視で確認しつつ、それまでの空いた時間で事例やカタログ作成にあたりたいと思います。


伊東さんの建物は、ルールは明快ですが、モデュール(寸法調整)についてはおおらかな印象が私にはあります。端から端まで目地を通す感じではない。伊東さんと難波和彦さんが同時期にアルミの住宅を作ったときに伊東さんは基本モデュールを決めなかったけど、難波さんは決めた、というのをよく覚えてます。smtだと…たとえば2階の床を見てください。500ミリ角のグレーのビニルタイルが敷き詰められていますが、床面の吹き出し口がタイルに対して中心に入っていないのがわかりますか?難波‐ヴィトケンシュタイン的にはこれは許されない設備計画ですが、伊東事務所ではそこはおおらかだった雰囲気があります。タイルの床は1フロア全体で1枚と考えていて、目地はないものと見ていた。だから床吹き出し口の位置はタイルの割り付けによってでなく、その下のOAフロアの割り付けに従って決まっています。


また、現在図面が本・雑誌によるものしかないため、なにかと扱いづらい状況です。松原さんのほうで、CADデータのまま実施図面、照明・空調の詳細図面等お持ちでしたりしないでしょうか?やはり事務所のデータは外に出してはまずいのでしょうか?申し訳ありませんが確認をお願いしたいです。(中村)



ああ、図面の問題は大きいですね、メディアテークにもらえないですか?
私からも伊東事務所さんにお願いしてみましょう。
なお、今回の設計検討のとき、チューブは筒で簡単に作るだけで、傾いた柱などは再現しないでいいと思います。


みなさんおつかれさまでした。
図面化と被災箇所checkは空間班が担当している(?)ようですが、後々皆で共有するものなので、余裕があれば、他の班も少し手伝うようにしてください。M1は授業もありとても忙しいと思いますが、この設計課題は自分次第で必ず成長できるものだと思います。25日のヒアリングも頑張りましょう!(TA赤垣)


まわりに敏感になり、少し前の状況を一生懸命想像すること。それが私たちに今求められていることです。(松原弘典)