課題概要

テーマ
国六条以後の現代北京のための高密度小規模住宅地区計画
_通州地区で青年城を計画する

概要
北京東郊外の通州地区に、青年城(若者向け住宅地区)を設計するという課題。今回の課題は、1「大きな住宅地区1つをまるごと」、2「小規模住宅を中心に」、3「高密度に」設計するという3点が重要なテーマになる。
 1つめの「大きな住宅地区1つをまるごと」設計する、というのは、今の中国の状況と密接に関わっている。今回の課題は敷地が4.2万平米あり、これを単体の開発主体が購入、整地して青年城を作るという想定である。まだこちらではこうした大規模な住宅開発が多いし、逆にこうした開発を都市部において単体の事業主が短期間ですすめることを想像することは、今の日本ではもはや難しいだろう。今回中国をテーマにみなさんにこのスタジオに取り組んでもらうポイントの第一はこのスケールの大きさとスピードをどう扱うかというところにある。
 2つ目の「小規模住宅を中心に」考える、というのは、最近の北京の住宅供給事情と密接に関わっている。2006年5月17日に国務院常務会議は、高騰する中国の住宅価格を抑制するため、「住宅供給構成の調整および住宅価格の安定に関する通知」(通称「国六条」)を打ち出した。これはさまざまな内容を含んだ、昨年不動産市場に最も大きな影響を与えた政策だったが、その要点は「民間デヴェロッパーの開発物件は、延床面積の70%以上を90平米以下の住宅にしなくてはならない」という点である。その公布後今に至るまで、90平米以下の住宅をどう開発するか、というのが北京の住宅開発市場での大きな話題になっている。1番目のポイントでスケールの大きさをどう扱うかという話をしたが、同時にこの2番目のポイントでは、大きいマスタープランのレベルだけでなく、最後は90平米以下の住宅、という住戸レベルでの話まで扱うことが必要になってくる。スケールを横断するような設計姿勢が求められるだろう。
3つ目の「高密度に」考える、というのは、日本人の大学院生に中国のことを考えてもらうというスタジオの事情と密接に関わっている。皆さんのような日本人学生が、いきなりよくわからない北京の土地で自分たちが設計をすることに何らかの意味を見出すとしたら、高密度住宅をどう設計するか、という点に着目するのはひとつありうる視点ではないだろうか。中国の大学(5年制)の建築学科では、4年生に必ずこうした大規模開発の演習を行う。現地の事情をわかっているという点で我々は彼らにかなわないわけだし、私も数回しか仙台にいけないのでおのずと指導にも限界がある。おそらく最終成果物は今の北京の状況と多少の齟齬が出てくるだろう。それでも私がみなさんにできるだろうと思われること、しかも中国人学生よりもよくできるだろうと期待しているのは、この「高密度性」を考えるという点である。我々日本人はなにしろ普段から狭い空間に囲まれて暮らしているし、効率のいい空間利用を考えるのには間違いなく長けているはずである。外国人(他者)としてどこまで戦略的に北京で現代住居を考えることができるか、ということをみなさんと一緒に考えたい。

■敷地
北京市通州区玉帯河大街(玉橋西路東、芸苑東街北、京秦鉄路南)の敷地42161平米
01、02図版、03、04グーグルアース航空写真、07キャドデータをそれぞれ参照

■具体的な設計要求
容積率:200パーセント以下(地下面積の25000平米を含まない)
建蔽率:30パーセント以下
用途:容積いっぱいに青年城(若者向け住宅地区=単身者、カップル、小さな子供まで含めた3人世帯がメイン)、別に適宜商業、幼稚園など公共サービス施設を加える、地下に駐車場を計画
高さ制限:48m
階数制限:地上16階、地下2階
セットバック規制(敷地境界線):一律5メートル以上
セットバック規制(道路境界線):西側の玉橋西路とは15メートル以上
セットバック規制(鉄道線):北側の京秦鉄路とは40メートル以上
緑化率:35%以上
交通規則:主要出入り口を敷地の西、北、南に設ける
駐車場:各戸自動車1台、自転車2台分のスペースを確保
その他:国六条の規制に合致すること(住宅開発面積の7割を建築面積90平米以下の住宅とする。階高4.9mを越えると2層住宅としてカウントする。)