松原です02

■連絡事項
こんにちは、松原弘典です。
本日BMAの中山の方からヤフーのブリーフケースに「敷地資料」と「施主資料」の2つをアップロードしてもらいました。山村君の方で確認して履修者に配布をお願いします。
敷地は北京の東四六条、第二環状線の中の旧市街地です。架空施主を3組用意しています。カイジマスタジオでは4組でしたが今回は履修者が少ないので3組にしてあります。履修者をうまくわけてそれぞれがどの施主を相手にするか決めてください。


■課題について
今回の課題は、古い(ただし決して歴史的構法的には価値が高いわけではない)四合院が残る北京の実際の敷地を対象に、住宅の新築/改築を行うというものです。架空施主ともコミュニケーションをしながら案をまとめていってもらいます。
いくつかここで考えるべきポイントについて列記します。


・都市的なコンテクストの問題
第二環状線の中は建築について厳しい制限があります。3階を越える建物は作れませんし、今ある四合院を立て直す場合外壁はグレー色にしなくてはなりません。一方でここは「東四」という飲食街が近く、四合院を改造したレストランがいくつかあります。中庭に仮設の屋根をかけたり、ファサードにガラスボックスを足したりした例が見られます。
規則とそれをはみ出る運用の間で北京の四合院はたくましく生き延びています。私たちは博物館に四合院を造るのではありませんから、そういうたくましさについて想像力を働かせていいと思います。
そのためには戦略が必要です。竣工検査時には建築面積が増えていてはいけませんが、検査後にさまざまな改築を加えるのは各施主の自主責任でできます。将来的に役所の指導が入った場合は修正が必要ですが、外から見えない中庭にいろいろな手を加えるのは許容範囲内と考えます。高さも変更不可で外壁はグレー色にしなくてはなりませんが、厳密に屋根形状など指定があるわけではありません。周辺に大きな影響を与えない範囲で別の可能性を検討することはかまいません。
また、実際の構法についても四合院だからといって構える必要はありません。実際このあたりで建て替えている平屋はあっけないくらい簡単にできているものばかりです。グレーのレンガを積んで木の屋根架構をかけてモルタルと防水をして瓦を載せているだけですから。北海公園の中に歴史的な四合院を再建するわけではない。これくらい簡単にできているから四合院は残ってきたんだと思わされるくらいです。簡便さを守りながら新しいものや考えを挿入できればいいと思います。


・建築的にどう中庭を扱うか
ここを環境的なバッファにするとか、新しいプログラムを挿入することで、興味深い建築を作ってもらえればと思います。


・北京の環境
冬とても寒いということ、冬にまったく緑がなくなって風景がグレーになってしまうこと、乾燥が激しく夏の水不足が深刻なこと、春の北西からの風がとても強いこと(黄色い砂を運んでくる)、こうした問題に対してなにか考慮された設計だとなおいいでしょう。


・施主との距離
この課題の、学部生の住宅設計課題と違う最大の点は架空施主の存在だと思います。そうなんども細かい交流ができるわけではないですが、どうか施主の意見をよく聞いて、誤読や深読みもしながら、これをうまく利用していい住宅を設計してほしいです。


■今後のスケジュールについて
スタジオ前に何度か勉強会があるようです。1回目のような概論はさっさと終えて、この敷地と施主を考慮に入れた作業に入ったほうがいいと思います。たとえば日中を問わず古い木造建築の改築について事例を集めるとか、中庭をうまく使った例を調べるとか、北京の植生について考えるとか、積石造について調べるとか、敷地周辺の状態を別の角度から調べるとか…。設計のために調査をするのであって、調査のための調査にならないように。つまりもう設計は始まっていないとだめです。それをどう正当化するか実証するための調査をしてほしいです。「戦略的」とはそういう意味でもあります。


早いうちに施主の割り振りを決めて、作業を始めたほうがいいでしょう。施主との連絡はだれかが質問など取りまとめて一本化してください。ばらばらに随時連絡を取るようなことがないように。何回もやることはなく数回にまとめてやるようにしてください。スケジュールに事前に組み込んでおいたほうがいいと思います。
私が6月にうかがうまでには、各自最初の案が固まっているといいですね。


松原弘典/北京