松原です04

最終講評に向けてみなさんがんばっていることと思います。
ヤフーのブリーフケースを通してお送りしたクライアントの反応は見ていただけたでしょうか。おそらくこの課題の一番の特徴であり、かつ学部生の住宅の課題と違うところは、この架空施主の存在だと思います。もちろんそんなに密にコミュニケーションが取れるわけではないですが、みなさん各自が施主の意見をどう聞いて、それについてどう反応するのか、それがとても大事だと思います。施主の意見を積極的に取り入れる態度もあるでしょうし、施主に対して納得できる説明が可能ならある程度施主の意見を読み替えることもありでしょう。実はそうしたコミュニケーションこそが建築設計の醍醐味の大きな部分を占めるのに、今の大学教育ではその部分がほとんど欠落してしまっている、課題担当者としてそういうことを改めて気づかされました。


クライアントCの反応は中でも特に具体的(デザイナーなのでそうなったようです)ですが、どうか自分なりに取捨選択していいものをつくってください。最終成果物や講評会では、是非最初自分はこういう案を作ったが、施主の意見がこう出てきてそれに対してこう反応した、ということについて触れていただきたいと思います。


それから再度強調しますが、1期2期の平面図の描き分けもとても重要です。四合院は今でも姿を変えながら現代北京の中で生き延びています。我々は歴史研究をやっているわけではありません。歴史研究はある意味1期を厳密にやっていくことだと思うんですが、みなさんは2期で増改築の実際の姿を描かないといけない。今回の提案が1期と2期に分かれているのは、四合院がこれから生き延びていくひとつの未来像を描いていると言っても過言ではない。「あるかもしれないリアルな未来像」だと思って図面を描いてもらえればいいと思います。


最終講評は以上の2点、つまり「1期2期の戦略」と「施主への応答」がポイントになります。みなさんのがんばりに期待しています。

松原弘典/東京